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パラパラと捲られた札束の中身……それは全て、ただの白い紙切れ。
その事実を目の当たりにしてやっと、社長は自分の置かれた立場──今の現状に気付かされる。
──どういう、事だ……
どういう……
……嘘だ。そんな筈はない……
そんな……嘘だ。
嘘だ、嘘だ、嘘だ……!
脳裏にチラついたのは、密かに想いを寄せていた彼女。
ストリップをさせられ、涙を流した悲劇の彼女。
資金繰りに悩んでいた俺に、優しく声を掛け、丁寧に話を聞いてくれた……彼女。
──嘘だ。
嘘だ。嘘、だ……
彼女が全部、仕組んでいたっていうのか……?
『……それなら、金融関係に知り合いがいるので、紹介しますね!』
ふと、彼女と食事デートをした時の事が思い出される。
彼女が余りに耳を傾けてくれるから、ついポロッと、会社の内状を吐露してしまった。
紹介してくれたskyファイナンスは、誠実で。会社の経営状況を説明すると、すぐに大金を用意してくれた。
これで何とか、近々に迫った最悪の危機は免れたものの……倒産は免れない。
そんな折。亡き父と長年付き合いのあった大手の取引先から連絡が入り、再び契約を結びたいとの吉報が舞い込んだ。
skyファイナンスの利息は高額ではあったものの、愚直に返済を重ね、遂に全額を返せるまでに。
しかしその頃になると、次第に彼女から笑顔が消えていった。
『……借りた資金は……やはり手元に置いておくべきです』
浮かない顔をした彼女の訴えを聞き入れ、再びskyファイナンスから大金を借り、利息分のみを返済するという形へと変更。
経理のノウハウのある彼女を信頼し、その一切を任せ、苦しいながらも着実に利益を上げるまでに会社は成長。
やっと立て直す事が出来た……そう思っていた。
『……返済分、足りません』
ある日──
浮かない顔をした彼女から、思ってもみない言葉が飛び出した。帳簿を確認すれば、数字上では……黒字。
『……ごめんなさい。私、私……』
泣きじゃくる彼女を宥め、何とかしなければと頭を抱える。
悩んだ末遂に手を出したのが、太田組が後ろ盾となっている闇金融──サクラ。
「僕の下僕になるなら、あの女に奪われたもの全て、取り返すのを手助けしてあげる。
……その代わり……」
若葉が、ゆっくりと社長に近づく。
酷く混乱した社長は、脅えながらも平伏すように見上げ、まるで若葉を、神格化したものを見るような目付きに変わった。
「毎月マージンの3割を、僕に滞りなく永続的に納める事。
──どう? いい条件だと思わない?」
「……え、ぅえ″……」
ぱくぱくと金魚のように社長が口を動かす。その目の前にしゃがんだ若葉は、妖艶な笑みを浮かべながら、立てた人差し指を社長の鼻先にツン、と当てた。
「……僕の従順な犬になるなら、アンタが余計な欲を出さない限り……
僕の気分次第で、可愛がって(ヌいて)あげるよ……」
ふわりと漂う、甘くて胸の奥を柔く締めつける香り。唇から覗く、色っぽい舌。
若葉の妖しい目つきと甘い囁きにより、すっかり縮こまっていた社長のイチモツが、血塗れたまま膨らみ、むくりと頭を擡げた。
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