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思えばそれは 育ての母の嫉妬だったのだけど…… 僕は捨て猫よりも軽い命で 生きている価値などこれっぽっちもないんだと思った 地面の冷たさと冷気が 薄着の僕の体を容赦なく熱を奪う 震えて擦れるビニール袋は 単に風のイタズラに聞こえ まさか人が入ってるとは誰も思わないだろう 僕は身を縮めながら 何度も、行ってきますのキスを父にされたシーンを思い出し、想像の中の父に縋っていた まるで、マッチ売りの少女のように… それが 僕の心の支えだった… 「若葉っ!」 その時、僕を呼ぶ声がした 驚いてビニール袋を揺らす 足音が近付いたが、すぐにまた遠ざかる 「……っ!」 身体も揺らしながら 後ろ手で縛られたその腕を 必死で動かした 縛られた手首の紐が肌と擦れ 冷たくなった肌が切れるように痛い 「…若葉っ!」 再び声が近付く 千切れてしまいそうになる手足を動かし 必死でビニールを揺らし音を出す …その時 しっかりと閉じられたゴミ袋の口が開く 「わか…ば……」 達哉の驚いた顔 体は芯まで冷えきっていて 僕は朦朧としながら達哉を見た 達哉が僕の頬に触れる その体温が熱く 僕は火傷してしまうんじゃないかと感じた 達哉は僕の姿を見て 綺麗な涙を流した そして、冷たい僕の体を力強く抱き締める

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