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教卓に置いた日誌を掴み上げ 担任は僕を避けるように教室から出ていった その様子がおかしくて 僕はほくそ笑んだ その夜は 珍しく父がいた 父がいる時 母は幸せな家庭を取り繕う 母は、帰ってきた僕をにこやかに迎え入れ 食卓には僕の分の夕食もしっかりと用意する この時ばかりは 母の前で、達哉と会話を交わしても何も言われない…… まるで仮面でも貼り付けたかのように 母は始終笑顔だった 「………」 本来在るべき姿なのだろうが 気持ちが悪く 落ち着かない… 「若葉、どうした?」 僕の箸が進んでない事に気付いたのか 父が僕に声を掛ける 父は年を重ねても 相変わらずハンサムだった 二重で少し垂れた瞳は大きく 鼻筋が通り 笑った時に出来るほうれい線や目尻の皺でさえ セクシーポイントのひとつに成り上がってしまう それに加え 落ち着いた大人の色気を纏い ファンクラブができる程人気のある達哉が、霞んでしまう程の強いオーラだ 「………」

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