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それはただの遊びの一環だった 不良も避けるような筋肉隆々の体育教師が 僕の前で跪き、言うことを聞く 何かが欲しいと言えばそれを与えてくれるし あの人が嫌いと言えば、そいつに厳しく当たる たまにご褒美として足を舐めさせてあげてるけど 主導権を握る僕が嫌がれば それ以上の事はしない さっきは首筋に痕を付けられてしまったけれど、それも想定内 利用価値のあるものにしてやる…… 「……達哉?」 クーラーのない部屋は蒸し暑く 扇風機の風だけでは凌げない 小さなローテーブルで宿題をしていた時、勉強机にかじりついていた筈の達哉がこちらを見ていた 「そうだ、ここ解んないんだけど…」 そう言って、少し伸びた髪を耳にかける 「若葉、ソレ…」 達哉は、明らかにソコを見ていた 釣糸に付けた餌に誘き寄せられた魚の様に、僕に近付く 僕はそれを見届けた後、手でそれを覆い隠し、俯いた 「これ、は……」 「誰に、されたの?」 達哉が僕の前に座る そして真剣な目で、僕を見た 「…達哉」 久し振りだった 母の呪縛で あれから達哉は、僕に目すら合わせてくれなかったから… 視線が絡み合う そして伸ばされた手が、僕の肩に触れた 達哉に触れられる事が嬉しくて、心が震える 達哉……

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