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甘えるような、すがるような目で見れば 達哉は僕を強く抱き寄せた ……達哉の匂い… ただそれだけなのに、満たされる… ゴミに出された僕を見つけてくれた時の様な 温もりと嬉しさで溢れる やっと、こっち向いてくれた… 今はまだ、それだけでいい またいつか 達哉と、できるなら…… バシッ! 家に帰るなり、母に平手打ちを食らった いつもこうやって、母は問答無用でいきなり手を上げる 理由が解らないままの時もあるし、暴行の後で聞かされる事が多い 大概は理不尽で、母の機嫌を損ねたから、というものだ 幼い頃は、それが怖くて 生きている事さえ、絶望に感じていたけれど あの日、達哉に救われてから 僕は生きる理由を見つけた…… それから幾度も母からの仕打ちは続いたけれど 達哉が傍にいる限り 僕はそれに耐えてきた それは体が大きくなった今でも…… 「汚らわしい子!」 そう言って母は、台所にあるポットを手にしてきた 「そんなに痕をつけたいなら、いくらでもつけてやるわっ!」 僕を突き飛ばす様にして椅子に座らせ、ポットの注ぎ口を首元に突き付ける その気迫に、僕の中にいるインナーチャイルドが、大声で泣いた 助けて助けて助けて! ごめんなさい、ごめんなさい… お母さん、許して… 目の前に 五才の僕が現れ、身を縮める 庇うように頭を隠した腕には 棒で叩かれてできた、いくつもの痣……

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