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僕の瞳から、涙となって溢れ零れる あの頃の僕が 僕の心や体を支配し 体が震え、動けない…… 激しい動悸がし 息苦しくなる そして、締め付けられる様な頭痛と目眩……… 母の左手が僕の肩を掴み 右手でポットを傾ける 「…ただいま」 その時、玄関のドアが閉まる音と共に、達哉の声が聞こえる その声に母が驚き、ポットを持つ手が止まった 「…お帰りなさい……」 母の顔色がサッと変わる そして、ポットを僕から離すとテーブルの上に静かに置いた 「………」 ふらふらとしながら台所へと消えた母は 何事もなかったかのように夕飯の準備を静かに始めた 五才の僕は それでも身を縮めて母の様子を伺う 不安そうな顔をしながら 母の目を盗んで 達哉の姿を探す 達哉、達哉… 手足に力を入れ 僕は椅子から立ち上がった そして何事も無かったかの様に 平常心を装って廊下に出る …倒れそうだ 体に力が入らない…… 酷い目眩を感じ、僕は部屋に戻るとベッドに倒れ込んだ

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