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すると体育教師の厳つい手が
僕の顎を掴み上げる
昨日、母にされた仕打ちから
きっと近々担任が僕をこの教室に呼ぶだろうと睨んでいた
だから、敢えてこの教室を選んだけれど……
「……怖かっただろう」
憂いを帯びた目を向けた体育教師は、顔を寄せてきた
それを僕は、努めて冷静に
唇の前に手を置き、阻止する
「……や、」
目を伏せ、怖がる様子を見せれば
体育教師はそれ以上手を出してこなかった
……僕の従順な猛犬
『多分、君のその匂いは、フェロモンだよ 』
『普通、異性に放つものだよね、それ…… 』
だとしたら
達哉にも感じてる筈……
…達哉に触れたい
触って貰いたい……
「……達哉」
我慢できなかった
勉強する達哉の背後から、腕を回し抱き締める
すると、達哉の手が止まった
そしてゆっくりと振り返り、僕を見る
「……若葉」
達哉の思い詰めた顔…
目が合ったと思った瞬間
達哉にキスをされた
…たつ、や……
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