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金を用意する気は毛頭ない
ばら蒔きたければ勝手にそうすればいい…
どうせ僕にはいい噂なんてない
今更教師に襲われただの誘惑した等とある事無い事言われた所で、痛くも痒くもない
僕が反応なく見上げていると
不良は鋭い目付きで僕をじっ、と見下ろした
「…お前、変な奴だな」
「………」
不敵な笑みを寄越される
僕が視線を逸らさずにいると、不良は携帯を仕舞った
「三日待ってやる
お前、名前は?」
「工藤若葉」
「若葉か…、俺は美沢大翔 だ
忘れんなよ」
大翔は踵を返し教室から出ていった
家に戻る事になった
父が僕の手を握る
本当はずっと僕を囲っていたかったらしいが、愛人宅を渡り歩きヒモである父に、僕一人を囲う経済力はなかった
「…若葉」
それなのに、父は玄関前で僕の顎をくいっと上げ顔を寄せた
まるで儀式の様に…
「真咲さんっ!」
玄関を開け家に入ると、高揚した母が父に駆け寄った
僕の目の前で父に抱き付き、ただいまのキスを求める
「………」
そんなやり取りの奥から、達哉が姿を表す
……達哉…
あの日、途中で家を追い出され
それを助けようと母に抗議してくれた達哉…
僕は靴を脱いで上がると、達哉の傍に行き、手を取った
「……若葉」
達哉の瞳が潤む
会いたかった、達哉……
…早く達哉と繋がりたい
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