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「…大丈夫、怖くないから…ね?」 「行こ?」 二人が僕の両サイドに立ち、小さい子をあやすかの様に笑顔を近付ける 弟を手懐けて達哉に近付こう、という魂胆なのは解っている 「……」 顔を曇らせ、悲しそうに視線を泳がせると、二人は解りやすくオロオロし始めた 「…ど、どうした?」 「ちょっと怖かった?」 「……ううん、淋しいなって… 誘ってくれるのは、僕が弟だから……ですよね……?」 チラリと二人を見て頬を赤くし、憂いを帯びた瞳を潤ませる すると二人は簡単に否定の言葉を口にした 「違う違う!」 「…君が可愛いから、純粋に興味があるの」 再び子供をあやすかの様に笑顔を僕に見せる 一瞬驚いたように目を見開き、直ぐにはにかんだ笑顔をわざと見せる と、二人は僕の肩や頭に勝手に触れてきた すると残りのファンクラブメンバーが腕組みをし、ずいとこちらに一歩近付く 「なに達哉くんの弟誘惑してんのよ?」 「ていうか、達哉くんへの想いはそんなもんだったのね!」 「規則違反よ!」 その言葉に、僕は可笑しくて堪らなかった ……何言ってんの? 僕に見とれていた癖に…… 「何よ規則って!」 「誰が誘惑してるって?!」 二人も負けじと声を張る 小動物の様に震えて見せながら、僕は口角を小さく上げた それに気付かない彼女らは、掴みかかって激しい喧嘩を始める 「……」 それを背にし、僕は玄関のドアを開けた と、母が勢い良く飛び出す 「ちょっと貴女達! 喧嘩なら他所でやってくれないかしら?!」 その声に、女子高生達は一瞬で動きが止まる そして母の姿を確認すると、みるみる青ざめた表情へと変わる 軽く身嗜みを整え謝罪の言葉を口にし、達哉のファンクラブ会員達は足早にその場を立ち去っていった 「……若葉、ちょっとこっち来なさい」 玄関に入った僕を、母が腰に手を当てたままジロッと睨んだ

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