59 / 66
15
テーブルに、幾つかの写真が置かれる
それは教室に貼り出されたものと同じ、僕の肌が露になったものだった
「あんたは汚い猫ね……」
深く刻まれた眉間の皺
母は椅子に座ろうとする僕に、床を指差して命令する
「猫なら猫らしくそこに座りなさいっ!」
ヒステリックに声を荒げ、何処から持ってきたのか細い鉄の棒で僕の肩や背中を叩きつける
『……ごめんなさい…』
五才の僕が現れ、えんえんと泣きながら母に赦しをこう
それを、床に手を付いた僕の目の前でやってのける……
「私の躾が足りないのかしら
今まで人間だと思っていたからいけないのね…
……今日からあんたの場所はここ!
達哉の部屋になんか入れさせないわ!」
右手に持った棒をもう片方の手のひらにトントンと何度も受け、威嚇する様に僕を見下げる
そして思い付いた様にキッチンへ向かい、水を張ったグラタン皿を手にして戻ってくると、僕の目の前の床に投げ置いた
瞬間水しぶきが僕の手に掛かる
「ちゃんと舌で飲みなさい
……得意でしょ?」
嫌みったらしく言われると、五才の僕は母の傍らへと擦り付き涙ながらに訴えながら、温もりを求め始めた
「………」
こんなもの
振り払って投げつけて……
「……」
そう思うのに、手が震えてそれができない……
目を伏せ、赤い舌をちらりと見せる
そして身を屈めてその水に舌を付ければ
母の満足そうな顔がそこにあるのを感じた
「……もっと飲みなさい」
棒が降り下ろされ近くの床を叩く
その刹那五才の僕が怯えながら頭を抱え、床に伏した
『…やめて……お母さん』
その惨めな姿に抗おうとするが、心も震えそれができない……
ともだちにシェアしよう!