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「水玉のベッドって可愛いな」
そのベッドに押し倒された柚木はびっくりまなこで真上に迫る比良を見上げていた。
「ひ、ひ、比良くん……」
……キスされた。
……初キスだった。
「こんな、おれ相手に……気でも狂った……?」
小学生の頃から平均値を経てきた柚木にはとてもじゃないが信じられない展開だった。
パーフェクトな比良が平々凡々な自分と仲よくなりたいなんて、ありえない。
キスしてくるなんて、血迷ったとしか思えない。
自らかけた「呪い」じみた思い込みのせいで、何一つ、まるで理解できなかった。
「も、もしかして……熱あるんでない……? 実は風邪引いてるとか……?」
柚木はおっかなびっくり比良の額にタッチしてみた。
「あ、やっぱり、ちょっと熱い……?」
短い前髪を潜って額に触れる柚木の手に比良はくすぐったそうに笑う。
「そうだな、もしかしたら熱があるかもしれない」
ほら、やっぱり。
じゃなきゃ、いきなり肉まん買ってウチに突撃訪問したり、仲よくなりたいとか言ったり、こんなことしてくるわけーー
「俺の熱、柚木にうつさせて?」
悪戯にそう囁いて、比良は、目を真ん丸に見開かせた柚木にまたキスをした。
さっきよりも断然深いキスだった。
無防備だった柚木の唇を舌先でそっと抉じ開け、リアクションに困っていた柚木の舌にやんわり絡みついてきた。
「っ……っ……っ……?」
これって……いわゆる……ディープキスってやつ?
比良くんがおれにディープキス?
あ……そっか……風邪菌うつすために……。
比良の言葉をあほみたいにまるっと鵜呑みにした柚木は、ぎゅっと目を閉じた。
両手の行き場に迷って比良のセーターを控え目にきゅっと掴む。
薄目がちに柚木の反応を確認した比良は。
さらに深々と口づけた。
童貞男子の純潔だった唇を自分の色に染める勢いで。
「っ……ん、ぶ……っ……ン……っ……っ」
あっという間に赤く染まった柚木の耳朶。
息継ぎのタイミングが掴めずに鼻孔で苦しげに呼吸した。
比良くんの舌が……すごい……口んなかはいってくる……。
ぴちゃぴちゃって……お……音が。
わ、わ、わ……下唇、噛まれて……吸われて……る?
比良は柚木の唇を細やかに刺激し、優しく嬲った。
許容範囲スレスレの濃厚キスに柚木は健気に耐えた。
憧れる比良の風邪菌をなるべく自分にうつしきれたらと、彼のいち早い全快を願って、なされるがまま唇を委ねようとした。
でも。
これ。
やばい。
とける……。
「俺、夢を見たんだ」
柚木はずっと頑なに閉じていた目を開けた。
「すごくリアルな夢を見た」
……比良くん、どんだけ熱あるんだろう、急に変なこと喋り始めたぞ……。
「へ……へぇ……比良くん、まさかインフルじゃないよね……?」
「何回も同じ夢を見た」
「さすがに、おれ、インフルはちょっと……家族にも迷惑かかるし……」
「柚木の夢だった」
ずっと自分の真上にいる比良から微妙に視線を逸らしていた柚木は、恐る恐る、彼の顔に焦点を合わせてみた。
「ッ……」
……おれ、インフルになってもいーです。
……むしろ比良くんにうつされて光栄です。
教室で一度も目にしたことのない、雄めく色気を翳して大人びた微笑を浮かべる比良に柚木は見惚れた。
「柚木のココに」
そんな平凡男子の股間にするりと滑り込んできた比良の手。
「女子のアレができる夢」
制服越しに、カリッと、アソコに爪を立てられた。
「夢みたいな夢だった」
……それ、正夢なんですけど、比良くん……。
「こ……こんなの……世にも奇妙にも程がある……一体、どーいうこと……おれの頭パンクしそう……なんかの天罰……? 神様怒らせちゃった……?」
突拍子もない比良の話に狼狽して混乱しかかった柚木だが。
鉤型に曲げられた比良の長い指が制服越しにアソコにめり込んで。
「ぃ……ッ……ッ……!?」
これまでのひとりえっちを越える刺激に体をビクリと震わせた。
「……」
「ひ……比良くん……やめ……」
「……まさか本当にできてるのか?」
「っ……っ……っ……」
「なぁ、柚木、教えて……」
「ぁ……ぅ……」
制服ズボンとぱんつ越しにカリ、カリ、ゆっくりと引っ掻かれた。
「ひゃっ……っ……あ……ある……できてる……ソコ、に、女の子のアレ……できて……」
想像を遥かに超える刺激と、衝撃的事実を初めて他人に打ち明けて。
柚木はぼろりと涙した。
「柚木」
「こ、こわかった、ほんといきなり、なんでおれがって、不安で、でもまぁいろいろしちゃったけど……」
「いろいろ? しちゃった……?」
「っ……今のスルーしてくださいっっ……とにかく、なんで比良くんそんな夢見たんだろ……ちょ……比良くん……?」
ギシリ
「スルーできない」
ベッドの上で比良はさらに柚木に迫った。
涙ぐむ双眸を間近に覗き込み、股間に滑り込ませた手を意味深に動かし、今度は強めに中指をめり込ませた。
「ッ、ッ……や、だ……」
「誰と?」
「ふぇっ……?」
「ココで、誰と、どんなこと、したんだ?」
ぐぐぐぐぐ……っ
「ふぅぅぅぅ……っっ……だ、め……濡れちゃ……」
「……」
「ぱんつ、染みんなる、から……おれ……このこと誰かに言うの初めてだよ……言えるわけないじゃん……いろいろって、それは……じ……自分で……さわったり、とか……ごめんなさい……」
「……なんで謝るんだ?」
比良の手が離れてほっとした矢先に。
「柚木の、見せて?」
あっけらかんと強請られて柚木はゴクリと息を呑んだ。
「いや……それはちょっと……ええっ、ちょっと比良くん、やめっ、おれのズボン脱がそうとしないでっ」
「柚木の、見たい」
「いやいやいやいやっ、おれのなんか目の毒だってば! やーめーて!」
「そんな風に自分を貶めるの、よくないよ、柚木」
「ひ、比良くん……あああっ……ちょ……もぉ……っ」
嫌がる柚木を余所に、比良は、下肢の制服をあっという間に脱がしてしまった。
もちろん柚木は極端に内股になって死守しようとした。
しかし腕力で叶うわけがなく、両膝を掴まれて左右ぱっかーんされ、ちょっと強引にご開帳される羽目に。
「み……見ちゃだめ……」
せめてもの抵抗として両手で股間を覆った。
「……柚木、ちゃんと俺に見せて」
「っ……だめ……あんまり……そんなじっと見ないでください……こわい」
「怖い? どうして……?」
……ああ、比良くんの前でチンコ勃っちゃってるし、しぬ。
「比良くんにヒかれるの、こわい」
「ヒかないよ」
「……こわい……」
「怖くないから。柚木。お願い」
比良に懇願されて柚木は……片手だけ退かした。
「これでがまんして、ほんとむり、泣きそう」
あくまで嫌がる柚木にそれ以上無理を強いられずに。
比良は空中で固定した両膝を掴み直した。
「自分で触ってみて、柚木、気持ちよかったのか?」
比良から顔を背け、異様なシチュエーションに心臓をバクバクさせていた柚木は羞恥心に打ち震えた。
「いったのか?」
「っ……ノーコメントで」
「もしかして」
「あ……もういーから、その先言わなくていい、すとっぷ、比良くん」
「あのときトイレで」
「っ……やめてやめてやめてやめて」
「シてたのか……?」
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