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39-俺の専属淫魔ちゃん/隠れ絶倫大学生×男ふたなり淫魔

「ただいま」 国立大の教育学部に通う三年生、二十一歳のシマは。 黒縁眼鏡のレンズ奥でその乾いた双眸をほんのちょっとだけ見張らせた。 「んにゃ……」 中古アパート二階の角部屋。 本日は朝イチから講義がビッシリ、大学の食堂で夕食をとった後は夜十時までネットカフェでバイト、ようやくワンルームへ帰宅してみれば。 ベッドで淫魔が寝ていた。 「シマぁ……」 今時期、シマが部屋着としてよく利用しているトレーナーに身を包んだ淫魔の彼。 名前は魅叉鬼(みさき)といった。 薄闇に映える白アッシュ髪。 ネコミミみたいに三角に尖った、可愛らしい小さなクロミミが頭の両サイドからぴょこんと出ている。 だぼだぼなトレーナー以外、滑らかな褐色肌にはニーハイストッキングしか身に着けていない。 今は着衣で隠れているが、その背中にはコウモリじみた薄膜の小さな華奢な羽が生えていた。 シマは彼と昨日に出会った……いや、再会したばかりだった。 ■■■ 「オレのこと覚えてねーのかよ」 夕刻の大学キャンパス内だった。 「くそシマ、きれーさっぱり忘れやがって、くそむかつく」 午後最終の講義が終わり、バイトもなく、最低限の人付き合いで飲み会などの約束も入っていないシマが即帰宅しようと、だだっ広い中庭を足早に突っ切っていたら。 いきなり後ろから腕を掴まれた。 振り返れば魅叉鬼が立っていた。 パーカーに極細スキニー、革手袋、コンバース、全て黒に統一されたコーディネート。 フードをかぶり、恐ろしく生意気そうな吊り目はあからさまにシマを睨んでいた。 178センチの自分より明らかに低い身長、華奢な体型、大学生というより中学生っぽい少年を怪訝そうに見つめ返していたら。 「オレのこと覚えてねぇのかよ」 まるで見覚えのない彼に喧嘩腰に言われたわけで……。 「おいッ、待て! シマ! おい!」 「どこの誰だか知らないけれど、ついてくるな」 「薄情者! 冷血めがね! 鬼畜やろー!」 他の学生にジロジロと見られる中、シマは大学キャンパスを出、夕日の降り注ぐ裏通りへ。 「それでも血の通った人間か、てめー!!」 黒ずくめの魅叉鬼は罵詈雑言を繰り返してしつこく後をついてきた。 ……どう見ても中学生かそこらのこどもだ。 友達とゲームでもしてるのか。 金品でも賭けて騙すのに成功したら獲得とか。 でも、どうして俺を標的に選んだのか。 ……それとも本当に前に会ったことがあるのか? 「あっ」 急に立ち止まったシマがいざ振り返れば魅叉鬼は過剰にたじろいだ。 無地のセーターを腕捲りしたシマは背中を屈め、再び繁々と彼の顔を眺めてみた。 滑らかな褐色肌。 あれだけ啖呵を切っていた割に、じっくり覗き込まれると頑なに強張った色味が強めの唇。 カラコンでも入れているのか、瞳孔が縦状に走る、一風変わった吊り目。 ……やっぱり全く見覚えが……。 「……シマぁ」 ……いや、待て。 ……縋りついてくるように俺を見つめてくるこの眼差しは、確かに、どこかで見たような。 「……ほんとに覚えてねーの?」 セーターの裾をきゅっと掴んできた魅叉鬼にシマは短く息を呑んだ。 『お前、どこから来たんだろ? 変な生き物だな』

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