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『俺だけの淫魔になって』 シマ、ああ言ってくれたけど。 その場のノリとか勢いだったかもしんねぇ。 いざ一緒に過ごすようになったら。 オレ、うるせーし、欲張りだし。 煙たがられるかもしんねぇ。 捨てられるかもしんねぇ。 「シマに捨てられ……」 頼まれていた洗濯物をしぶしぶ干す以外、シマの温もりが残るベッドで何をするでもなくじっと丸まっていた魅叉鬼だが。 昨日のようにまたしても疑心暗鬼の渦にどぼんと落っこちた。 何せ淫魔と人間だ。 住んでいる世界がガチで違う。 二人でうまくやっていけるのか、不安はあれこれ尽きなくて。 「捨てられるくらいなら先に自分から離れた方が何倍もマシじゃねーか」 そう思いながらも、心地のいいベッドから一歩離れることすら至難の業、シマの残り香をスンスン嗅いで不安を紛らわせていた魅叉鬼であったが。 「ん……?」 彼と出会い、それからずっと辿ってきたかけがえのない気配、匂い、息遣い。 それが肌身にひしひしと伝わり、まだ夕方にもなっていないのに、そう不思議がる余裕もなくベッドから飛び起きて玄関へ……。 「今、休憩中」 ドアのロックを自前の鍵で外したシマは目の前に立っていた魅叉鬼にちょっと驚いたものの、お行儀悪く靴を脱ぎ捨て、玄関に上がるなり。 「洗濯物ありがとう。ちゃんと下履いて外に出た?」 そう問いかけておきながら回答も待たずに、渋々お留守番していた淋しがりの淫魔を抱き寄せ、キスをした。 「ーー夕方まで待てなくて一端帰ってきた」 あっという間に上下の唇を二人分の唾液で濡らされた魅叉鬼は、半開きの吊り目を潤ませ、シマをじっと見つめる。 「シマの匂い、したから……帰ってきたってわかった……」 「匂い? ふぅん? 優秀な犬みたい」 「い、犬じゃねぇッ……あ、シマ……」 廊下に配置されているキッチン、その流し台に導かれ、しがみつくよう促された。 「ごめん、時間ないから前戯は省く」 すぐ背後でジーンズのホックを外し、急いた手つきでファスナーを下ろしたシマに魅叉鬼の全身はゾクリと打ち震えた。 余裕のない眼差しを浴びてピリピリと痺れた淫域。 閉ざされた入り口がじわりと重たげな熱を孕んだ。 「そんなに……オレと交尾したかったのかよ……?」 「したかった」 率直に即答されると独りでに淡く濡れた、多感にも程がある秘められた恥部の唇。 「……しょーがねぇ奴……」 片手でシンクを掴んだ魅叉鬼はもう片方の手でトレーナーをたくし上げた。 自然光に艶めく褐色尻をシマのいる方へおずおずと突き出す。 すでに淫らに濡れ光るアソコに指を添え、くぱぁ……と、蜜糸を連ねて拡げてみせた。 「しょーがねぇから……今度はオレがシマにご褒美あげる……」 本当は一回で終わらせるつもりだったが。 「魅叉鬼も気持ちいい……?」 「ぁっ……ぁっ……きもひぃぃ……」 「どれくらい……?」 「んっ、しゅっげぇ、いい……シマ、オレのっ……オレだけのっ……」 「魅叉鬼……」 真っ昼間、タイムリミットつきの状況に興奮し、シンクにしがみつく魅叉鬼を突いて、突いて、ひたすら突いて。 「好き……っ……シマぁ……好き、ぃ……」 快楽に乗じて何回も告白してくる魅叉鬼が堪らなくて、二日間の夜を忘れ去ったみたいに狂おしく締まる蜜孔に溺れ、腹の底から滾々と湧いてくる想いの丈を注ぎ込んで。 「遅刻するかも……な」 とてもじゃないが一回では収まらずに二回戦へ……。

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