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第12話 小さな出会い
暫く掃除をしていた鉄棒付近は、ゴミも集めて綺麗になった。
同じ所ばかり掃いていてもいけないので、場所の移動をしようと箒を動かす手を止めた。
「そろそろ向こうの方の掃除もしようかな」
「だったら私も行く~‼」
「俺も着いていく!」
そう僕が呟くと周りにいた子どもたちが声を上げた。
なんて優しい嬉しい事を言ってくれるんだろう…と感動していた僕は単純だった。
場所移動をした先は総合遊具のある場所で、そこで遊んでいた他の子に誘われて、みーんな直ぐ様遊びに行ってしまい僕はあっという間にポツンとひとりぼっちになったのだった。
「…だよね」
子どもってそんなもんだよね。
分かってたよ、なんとなく。
だけど、実習初日にひとりぼっちは淋しいかもね。
「…ふっ」
なんだか変な笑いが出た。
掃除が捗っていいさ。
強がってみたけど、心細さが込み上げてくる。
敦、今頃どうしてるかなぁ…。
親友の顔が思い浮かぶと、涙を誘われた。
泣いたらダメだ。
まだ実習始まって一時間なのに、早くも挫けそうな気配。
「先生」
ん?
「俺が手伝ってあげる」
僕の背中の方から声がした。
そちらへと顔を向けると、そこには赤い帽子をかぶった男の子がひとり立っていた。
赤い帽子をかぶっているという事は『りんごぐみ』という事だ。
因みに黄色は『ばななぐみ』で桃色が『ももぐみ』、紫色が『ぶどうぐみ』、そして緑色が『めろんぐみ』となっているらしい。
なんとも分かりやすくて良い。
「先生、名前教えて」
そう言った男の子は、5歳にしてイケメン枠へ収まりそうな顔つきをしていた。
「先生、名前‼」
あ、そうだった。
自己紹介が大切だよね。
「先生の名前は、麻生大夢っていうんだ。よろしくね」
するとその子は、はにかみながら口を開いた。
「俺は、園村裕太」
「裕太くんかぁ~よろしくね。今日から裕太くんのりんごぐみに行くからね」
すると裕太くんは満面に笑顔を浮かべて、大喜びで僕に飛び付いた。
「本当⁉へへっ、やった~‼」
そんな裕太くんが可愛くなって、僕もギュッと抱き締めた。
なんて可愛いんだろうて…‼
その後も掃除を続ける僕に付き合ってくれた裕太くん。
塵取りを持ってくれたり、ゴミ袋を先生に貰いに行ってくれたりと大活躍してくれたのだった。
淋しい気持ちが一気に吹き飛んで、僕は裕太くんのお陰でヤル気がグーンと上昇したんだ。
ありがと、裕太くん。
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