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第13話 朝の会が始まる
僕は掃除が終ると裕太くんに連れられて、りんごぐみの部屋へと戻った。
部屋に入ると若い可愛いい女の先生が待ち構えていた。
出口可奈と名乗った先生は、笑顔で僕に挨拶をしてくれた。
二十代半ば位だろうか。
背の高さは僕より少し低い。
女の子や女の人に免疫の無い僕は、直ぐ側で笑いかけられてドキッとしてしまった。
平凡な僕がモテる要素はなく、恋愛関係に縁の無い生活をしてきたのだから若い可愛い女の先生に照れが出ても仕方ないと思う。
そんな僕も、きちんと挨拶をした。
あくまでも実習に来ているのだし、そもそも恋愛にベクトルは向いていないから、可奈先生が可愛くても僕には関係の無いことだった。
「朝の会を始めるよ~‼」
可愛らしい声で、可奈先生がクラス全体に告げた。
これから朝の会が始まるらしい。
僕には初めての事だから、ドキドキする。
そんな僕に裕太くんが余っていた椅子を持ってきてくれた。
ちゃっかりと隣に座る裕太くん。
お礼を言うと、裕太くんは上目遣いで僕を見つめてきた。
それからプイッと前を向いてしまった。
「…?」
裕太くんの態度に首を傾げつつも朝の会が始まるので、僕は可奈先生の方を見た。
すると急にひとりの子が声を上げた。
「先生、真琴先生は~⁉」
その子に可奈先生が答える。
「真琴先生は今ね、美由紀先生と大切なお話し中なの。だから、先生が朝の会をしてもいいかな?」
ということは、可奈先生は担任ではないということだ。
知らなかった。
真琴先生というのが、りんごぐみの担任ということになる。
どんな先生かな?
ちょっとドキドキする。
「いいよ、先生がしても」
可奈先生の問い掛けに、子どもたちが賛成の声を上げた。
「可奈先生がしてもいいよ~‼」
「ありがとう。じゃぁ、始めるね」
そうして、子どもたちの声に笑顔で応えた可奈先生はピアノの椅子に座る。
そうしてピアノを丁寧に奏で始めた。
ゆったりとした雰囲気の中で、朝の会が始まったのだった。
その朝の会が終わった時だった。
りんごぐみのドアがガラリと開けられた僕は、自然とそちらに視線を向けた。
「え…」
思わず声が出てしまった。
…どうなっているのか?
そう思ってしまう瞬間だった。
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