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第14話 先生を選ぶ基準
驚くことは、まだあった。
この保育所の先生を選ぶ基準は、顔にあるのではないかと思う。
今朝見かけた透先生もそうだが、この『りんごぐみ』の担任である新田真琴先生も、かなりの男前だ。
ずかずかと僕の男としてのコンプレックスを刺激される。
身長は一七五あるかどうか位で、顔は中性的な感じだけど、目つきは少し鋭さがある。
クールな感じが、カッコいい。
スレンダーな体はモデルでもやっていそうな雰囲気で、水色のエプロンがクールさを倍増させている。
何だか圧倒されてしまう。
決して、僕の身長が低くて上から見下ろされるからという理由ではない。
「可奈先生、ありがとうございました」
真琴先生が口を開くと、そのハスキーボイスにちょっとゾクゾクしてしまう。
「いえいえ。どういたしまして」
可奈先生は真琴先生に慣れている為か、特別ドキドキはしないようで、自然と返していた。
まぁ、いつもドキドキしてたら仕事にならないだろうし…。
でも仲が良いのか、一瞬だけど見つめ合い笑いあった。
その後で今日の設定保育というものがあって、僕も子どもたちと沢山遊んだりした。
「お腹空いた~‼」
そんな子どもたちの声に僕も同意だ。
今、何時だろうかと、時計を見た。
十一時半。
先生と給食当番に混ざって、僕も配膳を手伝った。
そして、いよいよ念願の給食だ。
白いご飯の入った弁当箱と箸を手にして、僕は何処の席に座ろうかと悩んでいると、可愛らしい声が直ぐに上がった。
あちこちから声を掛けられて、悩ましい限りだ。
「先生、ここ座ってもいいよ‼」
聞き覚えのある声に顔を向けると、裕太くんが手を挙げてくれていた。
なんて優しい子だろうかと、僕が足を向けるよりも早く恐ろしい力が方向添加を仕向けてきたのだ。
直ぐ側で声を上げた女の子が、僕の腕をグイッと引っ張って既に用意してあった椅子に座らされた。
その余りの勢いに、僕は思わず尻込みしてしまう。
他の女の子が僕のおかずを持ってきてくれた。
「先生。一緒に食べよう…‼」
にーッコリと微笑みかけられた僕は、裕太くんの方に(ごめんね)とジェスチャーで謝ると、食事の為に箸を手にした。
食べはじめて直ぐだった。
隣の席に座った、先程の強引女子が僕の肩をチョンチョンとつついてきたんだけど…そのやり方が何とも言えず…子どもらしくない仕種だっ。
その子を見る。
「大夢先生、私の名前ね~菊地絢香。五月に五歳になったの。覚えてね‼」
茶髪でロングヘアーの今から将来絶対に綺麗になるんだろうなぁ…と分かる位可愛らしい顔の女の子だった。
可愛らしいというと語弊があるかもしれない。
服装は女子高生風、態度は不遜で、生意気な雰囲気が漂う。
そして今の時点で既に僕の上に立っているかの発言。
…苦手かも。
「先生、覚えてくれた?なら私の名前、言ってみて」
「…き、菊地絢香ちゃん…」
「あたり~‼よく覚えたね」
飼い主が犬を誉めるみたいな感じなんだけど…。
楽しい食事のはずが、とんでもない席に座ってしまったぞ。
とんでもないと思ったのは、この次だった。
「ねぇねぇ、大夢先生」
「何?絢香ちゃん」
僕が絢香ちゃんのパッチリした目に自分の姿が映った時だった。
「先生、セックスしたことある?」
僕は危うく箸で摘まんでいた貴重なおかずを落とすところだった。
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