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第15話 今どきの子どもは
「な、なっ、…えっ⁉」
「だーかーらー、セックス‼」
セ、セセ、セックスだってーっ⁉
僕の頭の中はパニックに。
まさか五歳児から、こんなことばを聞くなんて夢にも思わなかったからだ。
目玉グルグル状態の僕に絢香ちゃんは、呆れた顔をしている。
「え~先生、セックスも知らないの~?だっさ」
だっさ、て言われた。
ダサいとか、まさかこの場所で言われるとは思わなかった。
まぁ、僕は地味な男だけど、まさか保育園児に指摘されるなんて…。
意気消沈する僕にはお構いなしの絢香ちゃんは、相当おませさんなんだと思う。
次なる質問が飛び出すけれど、やっぱり僕には縁の無い内容なんだもん。
「彼女は?いるの?」
彼女?
僕はこの二十年間生きてきて、彼女なんていた記憶は無い。
この童顔が災いしてか、女の子からはそんな目で見られた試しはなく、いつも遊ぶのは男友だちだった。
第一にだよ。
訊くなら普通は先に彼女がいるかどうかじゃないの?
セックスって…絢香ちゃんテレビドラマの観すぎじゃないのかな?
僕がセックスっていう単語を知ったのは、高校生一年生だったと思う。
しかも友だちに「知らねぇのかよ」って、散々からかわれた記憶がある。
エッチな本を見せられて脱兎の如く逃げた思い出が…その後で余計にからかわれた。
「い、いないよ」
そう答えると、絢香ちゃんは「やっぱりね~」なんて鼻で笑うんだ。
く、悔しい…!
「好きな人もいないの?」
いません。
「私ね~好きな人が居るんだぁ」
「ふ、ふぅ~ん…」
急にうっとりしたかと思うと、絢香ちゃんは視線を遠くへと投げた。
僕は興味は無かったけど、仕方ないので曖昧に相槌しながらご飯に箸をつける。
「あのねぇ~私の好きな人はぁ~。先生、知りたい⁉」
いや、全然。
別に教えて欲しくは無いですけど…絢香ちゃんは訊いて欲しいようで。
「…誰が好きなの?」
解放されないだろう事を察知して、僕は絢香ちゃんに訊いてみた。
「あのねぇ~いちごぐみの~」
やけに勿体ぶった絢香ちゃんは、目をキラキラ~と輝かせて僕を見た。
「彌(わたる)先生‼」
彌先生、とは…?
その後の絢香ちゃんは彌先生の話が止まらなくなり、如何に素敵なカッコいい先生かを話してくれた。
僕は、あった事もない彌先生の事を絢香ちゃんの目線を通して知識だけが増えていき、勝手な想像図が出来上がってしまった。
透先生や真琴先生の様なイケメンなんだろうな。
でも、ふたりを見た後だと同じか霞んでしまう可能性もなきにしもあらず。
どんな顔してんだろう?
透先生は甘い感じ、真琴先生はクールな感じだったけど…?
「それでね、先生‼彌先生がその時に~」
絢香ちゃんのストーカー並みの情報量に、胸焼け寸前の僕だった。
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