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第3話 オリエンテーション
つい一昨日の四限目。
大講義室には城南短期大学・幼児教育科の二年生が大集合していた。
幼児教育科。
略して『幼教』は、その名の通り幼児を対象とする仕事。
つまり『保育士』を目指す学生の為の科だ。
保育士だけではなく、幼稚園教諭の免許もとれるけれど、先生の話によると此処にいるほぼ九割の生徒は保育士志望の様だ。
僕は高校生の時にはそこまで思わなかったんだけど、いざ進学を考えた時に『保育士になりたい』と思ったんだ。
子どもが好きだし、一緒に遊んだりとか楽しそう!って思ったんだよね。
その頃テレビでもちょうど保育士の様子を少しやっていてそれを観たけど、子どもは可愛いし保育士さんも楽しそうにしてた。
だから決めたんだ。
しかも『保育士』って響きが、いかにも専門職って感じてカッコいいしね。
まぁ、そんな理由で決めた進学。
僕は脳みそが悲しいレベルだったけど、先生たちのお情けで単位を無事に貰い、これまたお情けで空いていた推薦枠で受験をした。
ペーパーテストもマークシートだったので、分からない問題はペンを転がして運任せ。
面接では何故か僕が好きな野球の話になり、…で盛り上がり面接官と顔見知りだったのではないか?という位のやり取りをこなして無事合格。
そんなこんなで、今に至るという…。
話は戻るけど、保育士になる為には資格が要るんだよね。
それを貰うためには条件があって、そのひとつが保育所実習なんだ。
保育所実習を無事にこなして、実習先の先生から評価を頂かなければ、保育士資格が貰えないんだ。
そんなわけで、明後日から始まる保育所実習の為のオリエンテーションというものを今学校で行っていた。
オリエンテーションというのは「頑張って来いよ」という会のことで、先生達からのあつ~い激励のお言葉を頂くモノなのだ。
皆とは当分会えないのだから、しっかりと名残惜しんでおこうと、僕は集中して先生の言葉に耳を傾けた。
明後日から始まる二十日間の実習は、実家から近い、もしくはなるべく地元の保育所にお世話になる事になっている。
そんな僕も二週間前に、事前訪問に行っていた。
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