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第4話 ひとりぼっちの実習
僕が、お世話になる事に決まったのは『月森保育所』。
僕の家からすぐ近くで、まぁまぁ大きな保育所だ。
そして僕が小さい頃に通っていたところで、所長先生や主任の先生とは顔見知りだから、なんとなく安心感が持てた。
実習は同じ保育所に行く人もいるみたいだけど、僕は生憎ひとりぼっちで乗り切らなくちゃならない。
正直言って、本当に心細い。
でも、とにかくやるしかないワケで。
実習に行くからには、僕も子どもたちから見れば先生という立場になるんだよね…。
それを思うと胃がキリキリしてきた。
まだ始まってもいないのに、緊張感が高まってくる。
「いよいよだな」
先生の激励を受けた僕たち幼教生徒は、帰り支度を各々整えて、大講義室をぞろぞろと出ていく。
楽しそうに笑い合う生徒や憂鬱そうな表情の生徒と様々だ。
僕は、ちょっと憂鬱かな?
そんな僕に、階段教室の途中で友人の多川敦(たがわ あつし)が声を掛けてきた。
実家のある兵庫からわざわざこっちの短大に来た敦は、今はおじいちゃんの家にお世話になっている。
「うん。いよいよだよね。そういえば、敦も実習ひとりで行くんだったよね?」
数少ないひとりぼっち組のうちに敦も含まれるんだった。
そう思い顔を見上げるけど、僕と違って敦は全く緊張の様子は見えない。
…この違いは何だ?
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