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第17話 トラブル
翌日。そしてまた次の日も、僕は頭を抱える事になっていた。
それというのも…。
「ちょっと大夢先生、こっちに来てよ!」
「絢香ちゃん、ごめん。今は無理だから少し待って。後で行くから」
「えぇぇーっ‼今すぐ来てってば~‼」
毎日こんな押し問答。
絢香ちゃんは曲者だった。
りんごぐみの女の子の間では中心的存在の様で、プラス僕の実力不足を知っていて、無理な事も押し通そうとする。
真琴先生が居ない時に仕掛けてくるのだ。
どうやら真琴先生も気づいてはいる様で、僕に声を掛けてくれたり、絢香ちゃんにも話をしてくれていた。
そのお陰で、始めの頃より全然マシにはなったんだけど…それでも凄い。
絢香ちゃんの高慢振りはハンパない。
気に入らないと直ぐにいじけるし、嫌がらせに走るという…。
今朝もこの調子で、僕は朝から頭が痛かった。
生憎、真琴先生も可奈先生も見当たらない。
まだ来ていない様だ。
実習三日目で、まだ保育所の事も子どもたちの事も把握していないグダグダ感を漂わせる僕に絢香ちゃんも他の子も気がついている。
だから、からかわれるし、嘗められる。
その筆頭が絢香ちゃんというわけで。
「大夢先生ってばーッ‼」
絢香ちゃんが大声を上げたときだった。
ガラッと教室のドアが開くと同時に、鋭い声がした。
「絢香ちゃん、うるさいっ‼」
そこに颯爽と現れたのは、僕の味方である裕太くんだった。
帽子をかぶり鞄を斜めに掛けて現れた裕太くんは、眉間に皺を寄せたまま近づいてきた。
そして、僕と絢香ちゃんの間に立ち塞がった。
「大夢先生の邪魔ばっかりするなっ‼」
裕太くんが言うと、絢香ちゃんは唇を噛み締めた。
「邪魔してないもんッ‼裕太くん、うるさい!バーカッ‼」
絢香ちゃんは眉を吊り上げて、あっかんべーをした。
すると、裕太くんも「バーカッ‼」のお返しをした。
「大夢先生、絢香ちゃんなんか放っとこ‼」
裕太くんの言葉に、僕は焦った。
その言い方はないんじゃないかな?と。
でも裕太くんの僕を庇ってくれた気持ちは嬉しいし、先に馬鹿と言ったのは絢香ちゃんだし。
色んな事が頭を巡り、僕はどうしていいか分からなくなってしまった。
ここまで激しい言い合い、喧嘩は初めて遭遇する。
「おはよう」
突然、声がした。
それは僕が実習に来て以来、初めて聴いた深くて艶のある声だった。
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