18 / 33
第18話 噂のイケメン登場
背後から聴こえた低くて艶のある声。
こんな心地のいい声は聞いたこともない。
耳の奥に染み入る様な…。
誰?
そう思って僕が振り返るよりも先に、絢香ちゃんが顔を輝かせて走り出した。
「彌先生…ッ‼」
僕が顔を巡らせると、絢香ちゃんが相手の足元に飛び付いていたところだった。
相手は絢香ちゃんの顔を見下ろしながら、イイコイイコと頭を撫でている。
この人が噂の彌先生…⁉
顔は見えないけれど、背の高さは分かる。
透先生と同じくらい背の高さはあると思う。
僕なんか並んだら大人と子どもになってしまうかも?
「彌先生~‼」
「先生、おはよう‼」
「彌先生、おはよう~‼」
他の部屋に居た子ども達も心底嬉しそうに、集まっていく。
その大騒ぎの凄さといったら、驚く他ない。
様子から、その先生の人気の高さが伺えた。
先生達だけじゃなくて、子ども達からもこんなにも人気があるんだ…凄い。
なんだか急に緊張してきた。
話に聞いていた凄い人に会うからだろうか?
挨拶しなくちゃ、挨拶しなくちゃ、挨拶。
「裕太くん」
そう呼んで顔を上げた彌先生に、僕は息を呑んだ。
「…ぅ、そ」
思わず声が零れた。
世の中には特別な人が居る。
そんな一握りの「特別な人」が今、目の前に居た。
その時僕は、心臓が締め付けられるのを何処か遠くの意識で感じていた。
ともだちにシェアしよう!