21 / 33
第21話 いちごぐみ実習開始
「先生、何かいいことあった?」
毎朝の日課である園庭の掃除を裕太くんが、塵取り片手に手伝ってくれている。
ゴミを集めて塵取りでとって、ゴミ袋に入れている時に裕太くんが言ってきた。
どうやら顔に出ていたらしい。
「うん、裕太くんが手伝ってくれるから」
「本当⁉」
頷いてみせると、裕太くんは口元を綻ばせて嬉しそうにした。
半分本当で半分は違う。
本当をいうと、今日からいちごぐみでの実習が始まるからなんだ。
裕太くんとクラスが離れるのは辛いけど、今日から彌先生に指導して貰えると思うとワクワクして仕方がない。
「おはようございます」
その声に僕は反射的に顔を上げた。
「彌先生、おはようございます‼」
現れた彌先生の美貌は、朝日に負けないほどの眩しさだった。
服装はTシャツに黒のジーンズと動きやすく特に何の変鉄もない。
なのに、こんなにも決まるなんて…足も悔しい程に長い。
同じ様な格好の僕は…考えない、考えない!
「今日から宜しくお願い致します」
「こちらこそ、ヨロシク」
僕がお辞儀しながら挨拶をすると、彌先生がほんの少し微笑みながら言った。
ニッコリ笑顔が、またまた眩しい。
「掃除は後どれくらい残ってるの?」
「あぁ、はい。ここで終わりです」
僕が何気なく答えると彌先生は当たり前の顔して、ごみ袋を手にした。
「それじゃぁ、俺が持っていくよ」
「そ、そんな‼僕が持っていきますから‼大丈夫ですから~‼」
僕が慌てて、ごみ袋を引っ手繰ると、彌先生がキョトンとする。
「裕太くんと一緒に行ってきますから」
ごみ袋持って行く位自分でしなければ。
まさか指導先の先生にやってもらうなんて、駄目だろう。
僕が丁重に断ると、彌先生は「そう?」と、首を傾げた。
そんな姿も様になるから手に負えない。
頷く僕に彌先生も納得してくれたみたいだ。
「じゃぁ、僕は砂場に居るから。終わったらおいで。よし、皆で遊ぼう」
僕が再び頷いたのを確認すると、彌先生は周囲にいた子ども達を引き連れて砂場の方へと歩いて行った。
彌先生のひとつひとつがカッコイイ。
憧れてしまうのも仕方ない。
自分も将来あんな大人になれたらいいなぁと、彌先生の背中を見送った。
「よし、ゴミを捨てに行こうか」
「一緒に持つ‼」
ごみ袋を一緒に持ってくれた裕太くんに、僕はお礼を言うと、ふたり並んでゴミを捨てに向かった。
ともだちにシェアしよう!