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第22話 砂場のトンネル
ごみ捨てを終えた僕は裕太くんと一緒に砂場へと向かった。
そこでは既に沢山の子どもと彌先生、他にも二人ほど先生が遊んでいた。
「先生、トンネル作ろう‼」
裕太くんの発案に僕が頷くと、近くにいたりんごぐみの子どもと彌先生も「よし、皆で作ろう‼」と張り切って参加してきた。
皆で作ると早い。
あっという間に大きな砂山が完成した。
彌先生が子どもみたいに張り切ったから、大きさは半端ない。
「凄い‼大きいね‼」
僕が思わず感嘆すると、裕太くんが「うん‼」と嬉しそうに頷いた。
砂場で遊ぶなんて何年…何十年振りだろうか。
楽しくて仕方がない。
嬉しくてニコニコして砂山を見ていると、裕太くんが持っていたスコップを手離す。
「大夢先生、今度はトンネル作ろうよ。トンネル‼」
「うん、いいよ。じゃ、裕太くんはそっちから掘って。先生はこっちから掘るから」
そうして陣取ると他の皆もやっぱり「僕も」「私も」と一緒に掘り出した。
「崩さないように、ゆっくり掘らないといけないからね、大夢先生…‼」
「うん、分かった~!」
裕太くんの指示に苦笑しながら答える。
そんな事は大人の僕の方が知っているし、コツも心得ている。
しかし砂山が脆いのは間違いないわけで、僕は慎重に掘り進めていった。
少しすると随分と掘れてきた。
「けっこう掘れたよ!」
僕が嬉しそうな声を出すと、裕太くんも頷いたみたい。
「うん、俺も!よしっ‼大夢先生の穴と俺のを繋げる‼」
そう言って裕太くんは益々張り切り始めた。
「先生の所も結構惚れてきたよ」
彌先生も砂や泥がズボンについても一向に気にしないで、斜め向こう側を掘り進めていた。
時々砂山が崩れないように上を固めたり、他の子を手伝いながら。
彌先生は腕捲くりしているんだけど、その腕の太さと程よい筋肉質な感じが羨ましい。
僕には無いものだ。
砂場でトンネル堀の姿さえ絵になるとか、神様はどれだけ不公平なんだろうか。
僕が黙々と掘り進めていたトンネルは薄い砂壁の向う側と繋がりそうになっている。
「あっ、繋がった…‼」
叫んだ瞬間、誰かの指が僕の手に絡まった。
その指が誰の物かなんてすぐに分かった。
骨場っていて、大きくて長い大人の物だったからだ。
「はははっ、大夢先生と彌先生がいっちばーん‼」
彌先生が喜んだと同時に悔しそうな子どもたちの声が上がった。
大人の男の人の手だ。
なんだかいい年をして指を絡め合っているのが恥ずかしくなって、僕はただ声も出さずに笑っていた。
ちょっと強張った表情で笑っていたかもしれない。
漸く絡められていた指が外された。
ホッとしたけど、ちょっと残念な気持ちもあった。
「くそっ‼俺も大夢先生の穴に繋げる‼」
そう言うと裕太くんが、ガムシャラに穴を堀始めた。
その姿に皆が笑って、そして同じ様に堀始めた。
そんな様子を彌先生が口元に微笑を湛えて見守っていた。
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