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第7話 挨拶
…とは言ったものの。
緊張は隠しきれないわけで。
緊張のあまり、このままこの場所で潰れてしまいそうだ。
あぁっ…‼
僕は通用門の所で往生際悪くうだうだしていた。
顔を上げて周りを見てみれば、子どもや保護者の姿があちこちに。
当たり前なんだけど、先生の姿も…。
挨拶をしなくちゃいけないのは分かってはいるんだけど、その勇気が湧かないのだ。
ま、まぁ、遠いから挨拶しなくてもいいよね?
なんて、早くも逃げの体制に入っている僕は通用門を潜り抜けると脇にある職員用の下駄箱にコソコソと身を潜ませた。
それから靴を突っ込むと、持ってきていた自分のシューズを履くと覚悟を決め立ち上がった。
うぅ~。いよいよ始まるんだ、保育所実習が‼
内蔵が飛び出しそうな勢いでいたけれど、僕は大きく深呼吸をして自分を落ち着かせた。
「~っ、よしっ‼」
気合いをひとつ入れて、第一歩を踏み出した。
まずは職員室へ行って出席簿に判子を押さなくちゃいけないので、そちらへと踵を返す。
「わぁっ⁉」
すると、そこには愛らしい子どもが立っていた。
うっ!なんてミニマムなっ、可愛いなぁ。
何歳かな?三歳くらいかな?
その女の子は、じーっと黒い瞳で僕を見上げてきた。
よ、よし。
まずは取り敢えず挨拶をしよう。
「お…、おはよう‼」
そう思い僕は自分の中で精一杯の笑顔を浮かべて声を掛けてみた。
「…はよぅ」
その女の子は照れ笑いを浮かべながら返事をしてくれた。
それからトコトコと歩いて行ってしまった。
よ、良かったぁ~。挨拶してくれた!
僕は嬉しくて嬉しくて、さっきまでの緊張はどこへやら…。
ニコニコ笑顔で心もち浮かれて、職員室のドアをガラリと開けたのだった。
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