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第8話 いざ、出陣!
ドアを開けたそこには、よく見知った顔があった。
「おはようございます」
「おはようございます。いよいよ今日からね」
挨拶を返してくれたのは、僕が小さい頃に担任をしてくれていた清水美由紀先生だ。
今は主任として働いている。
先生の顔を見た僕は、内心思いきり安堵の溜め息をついた。
「はいっ、宜しくお願いしますっ」
「じゃぁ、大夢くん。あっ、今からは大夢先生ね」
美由紀先生にそう言われて自分でも『あっ‼』と気づく。
そうだった。
今日から実習生といえども子どもたちからすれば、僕は先生に違いなんだ。
大夢先生、かぁ~。
なんかちょっと照れるかも。
「大夢先生。判子を押して自分の入る部屋に顔を出したら、その後園庭の掃除を手伝ってくれる?」
「あ、はいっ。分かりました‼」
僕の返事を聞くと、先生は白い帽子をかぶりって外へと出ていった。
その姿を見送ると、僕は出勤簿に判子を押した。
それから実習用のエプロンを身につけた。
エプロンは淡い桃色の物で下の方にポケットがあるシンプルなデザイン。
ただ胸元にはでっかく、ドーンッと大きなポケットと、そこに『あそう ひろむ』と刺繍で名前が入っていた。
実習生が全員同じデザインなんだけど、ただひとつ。
男子は水色が基本。
だけど僕は申込書の色選択で、うっかり桃色へマルを付けてしまったのだ…。
色選択なんて気づかすに勢いでマルを付けてしまった結果がコレだ。
枚数は1枚か代えようの二枚かで悩んだんだけど…まさかの色間違い。
気がついたのは受け取ってから。
取り替えは効かず、新たに注文しなくちゃならなくて、それも時間とお金の関係で断念。
おっちょこちょいって言われてきたけど、まさかのミスにガックリとしたよ。
でも、まぁ仕方ないので桃色エプロンで頑張るさ。
僕は気を取り直して、前を向いた。
そうだ、これを着た瞬間から僕は『先生』なんだ!
「よしっ、笑顔で挨拶‼」
小声で気合いを入れると、僕は緊張感を圧し殺して目的地である四歳、五歳の混合クラスである『りんごぐみ』を目指して廊下を歩き始めたのだった。
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