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第33話

次の日、頭が重くて目が覚めると…… 時刻はまだ4時前だった。 そう言えば砂羽に連絡してなかったから「ごめん。バイトがあるから無理」と簡易な連絡を送ると…… 時間が早いのにすぐに返信がきたことに驚いた。 夏休みだし、夜更かしでもしていたのかもしれないと予想をつけて、ゆっくりと身体を起こす。 昨日泣きながら寝たせいで瞬きするのも苦労して、腫れた瞼が重くて視界が悪い。 人に会ったら驚かれそうなその顔に、眼鏡をしてカモフラージュする。 のそのそとした動作で適当に着替えをして、誰にも会わないように気を付けながら洗面所に向かう。 この顔を見られたら、母親に根掘り葉掘り聞かれるのは分かっているから、誰にも気が付かれないようにサンダルを引っ掛けて、そっと家を出た。 まだ外は薄暗く、犬の散歩をした人や新聞配達のおじさんとすれ違ったが、人通りはほとんどない。 まだ陽が出ていないせいか、Tシャツ一枚だと少しだけ肌寒い。 行く当てのない散歩は足の向く先に任せ、ゆったりとしたペースで進んでいく。 まだやっている店は少なく、コンビニで飲み物でも買おうかとふらりと立ち寄った。 コーヒーでも飲もうかとまっすぐにドリンクコーナーに向かうと、補充のタイミングが悪かったせいか、微糖とブラックしか並んでいない。 ミルクなしはきついなぁと諦めて、新商品をチェックしていると…… 肩をポンと叩かれて振り返る。 「え?」 「ヒナ、おはよ。」 そういつもの柔らかい声で肩を叩いてきたのは、砂羽だった。 ――なんで、このタイミング? あんなに会いたいと願っていたあの時はまったく会えなかったのに、一番会いたくないタイミングで鉢合わせとは…… なんとも人生は上手くいかないものだとしみじみ思う。 「お、はよ……。」 まさかこんなところでばったりなんて想像してなくて、部屋着みたいなダサい格好で来たことが悔やまれる。 あんまり見られたくなくて俯きがちに挨拶すると、砂羽の頬が俺に触れる。 「眼鏡なんて珍しいな。ってゆーか、目のとこ赤くなってる。どした?」 覗き込まれるように凝視され、泣きはらしてひどい顔だったことを思い出した。 砂羽の手をほどき、ブラックコーヒーを掴むと…… 背を向けたままレジに向かう。 「昨日、DVD見てたから……。ってゆーか、なんでいんの?」 「あー……夏休みだから、たまに走ってて。ヒナは?」 「なんか、目が覚めたから……。」 そう言い訳して、砂羽と並んで店を出る。 砂羽の格好もジーパンにTシャツというラフなもので、走ってきたという言葉通り首元は汗でうっすら湿っている。 砂羽の顔を見ているだけで涙が滲みそうで、まっすぐに前を向きながら缶コーヒーに口をつける。 「うあ、苦っ……。」 俺のその反応に砂羽が噴き出して、俺の手からコーヒーを奪う。 「珍しくブラックなんて買ってるから、変だなっておもってたんだけど……。まだ、寝ぼけてる?」 そう笑いながら俺のコーヒーに口をつけ、その代わりに砂羽が持ってミネラルウォーターを押し付けられる。 寝ぼけているふりして目元を擦ると、指先が少し濡れていた。 「まさか朝から会えるとは思わなかったな。今日はバイトだっけ?」 「……うん。」 「何時から?」 「あー…11時かな?」 「結構早いんだ?俺も短期でバイトしよっかなぁ……。ヒナんとこ給料いい?」 「……。」 「ヒナ?」 髪をすっと撫でられて、何事かと見上げると…… 砂羽が困った顔をして微笑んでいる。 少しぼーっとしてしまったようで、砂羽の言葉も頭に入ってこない。 いつ捨てられるのかを頭の中で妄想していたら、心がどこかへ飛んでしまっていた。 「ごめん、ちょっとぼーっとしてた。」 「まだ眠いんじゃない?」 「う……ん。」 さっさと家に帰って引きこもろうと思っていると、すっと顔に影がかかる。 「え?」 あまりにも早業で奪われたせいで、何をされたのか一瞬分からなかった。 唇に残る甘い余韻に思わず指を当てると、砂羽が不思議そうに振り返った。 「どした?」 「そ、外は……まずいんじゃね?見られるのもアレだし、見る方も辛いし。」 口ごもりながらそう言うと、砂羽に手を引かれて微笑まれた。 「まだ暗いし、大丈夫大丈夫。」 そう軽く笑う砂羽に流されて、引っ張られるまま薄暗い公園に入り込む。 人気がないことを確認すると、少し太めの木陰に2人で身を隠した。 日陰ということもあり、先ほどよりも肌寒さを覚えながらも、心臓は既に熱くなっている。 子供の時に砂羽とかくれんぼした公園でこんなことをするなんて、あの時は少しも想像していなかった。 砂羽に抱きしめられ、背中にごつごつした木の感触が薄いシャツ越しに伝わってくる。 お互いの心音が聞こえる距離で、ふわりと包み込むように優しくキスをされる。 ほのかに感じるコーヒーの苦みすら、砂羽の唇から与えられていると思うと…… 砂糖菓子のようにひどく甘ったるい。 舌が絡まりお互いの息が上がってくると、腰を強く引き寄せられ尻を両手で掴まれた。 指が食い込むほどそこを撫でられ、砂羽の熱を自分の股間に押し付けられる。 もう既に硬くなっているそこを腰を揺らして刺激されると、痛いくらいに舌先を吸われ、感じ過ぎて視界が潤んだ。 「あ……んむっ、んんっ!!」 汗ばんだ砂羽の髪をそっとかきあげると、邪魔な眼鏡を奪い取る様に外される。 今日初めて砂羽の瞳を直視して、目元をうっすらと赤らめているその顔に誘われるように、砂羽の目じりにキスを落とす。 目を閉じる隙も与えないくらいキスをされて、ベルトもしてないハーパンの隙間から指が入り込む。 揉み込むように尻を撫でられ、ごつごつした砂羽の指先が迷うように後孔の周りを刺激する。 流石にここはまずいだろうと思いながら見上げると、ぐりぐりと彷徨っていた指がつぷりと先端だけ差し込まれた。 「さ、砂羽!?ゆ……指、入っ!ん、ああっ!!」 先端だけ迷うように入ってきた指が、掻き混ぜるように奥に侵入してくる。 いやだと首を振りながらも身体は既に欲していて、砂羽の指から逃げることは出来ずに額を肩に擦り付ける。 「流石に、ここで立ちバックはきついかなぁ?」 「へ?」 のんびりとした口調ですごいことを言いながら、砂羽が先ほどよりも密着するように腰を押し付けてくる。 その中心は痛いくらいに張っていて、熱が帯びたそこにぶるりと身体が震える。 「うち、まだ親いるし……。」 言葉でそう濁しながら、俺の瞳をじっと探る。 「す、すんの?」 昨夜の焦りや苛立ちはどこへやら、砂羽に唆されてすっかりその気になってしまった。 振られるかもと泣いていたはずの瞳からは、違う意味の涙で潤んでいる。 「いや?」 「い、いやじゃねえけど……。」 砂羽とはしたい。 いくらでもしたい。 それでも昨日の今日でこれはあんまりなんじゃないかと思うのに、俺の熱は引くどころかさらに熱く高ぶっている。 このまま手放されたところで自分の手では持て余すその熱量に、ほとほと呆れる。 ――俺の身体、快楽に弱すぎる。 「けど?」 砂羽に意地悪な目で囚われて、顔がみるみる熱く火照っていく。 ここはまずいんじゃないかと視線を彷徨わせると、視線の先に出来る場所が見えてしまった。 「……こっち来て。」 公園に入った時とは逆に、砂羽の手を掴んで少し小走りでトイレに向かう。 幸いなことに最近建て直されたそこは公園の割には小奇麗で、少し安心しながら個室に潜り込む。 「流石に2人は狭いかな…?」 「……砂羽、でけぇもん。」 「ヒナはちっさいけど……。」 「俺は普通サイズだっつーの!」 窮屈なお陰で密着した身体を抱きしめ合いながらそんな話をしていると、砂羽に頬をつままれた。 急になんだと思って見上げると、蕩けそうな瞳で見つめられて顔が茹だる。 「ま、かわいいからいいけど。」 さりげなく甘い言葉を落とす砂羽に、ぞわっと鳥肌がたつ。 あまりにも自然にそんなことを言われて、どういう顔をしていいのかも分からない。 中1の頃は小柄なせいか言われることも多かったが、それなりに成長してからはそんな表現をされることは少ない。 どちかと言えば砂羽の方がかわいいと表現するに近いものがあるが、身長180を超えている男にそんなことを言うツワモノも少ないとは思う。 シャープな顔立ちだし、細身ではあるが人並みに筋肉もついている。 砂羽から見たら小柄に映るのかもしれないが、平均身長は越しているし、少しずつではあるがまだ伸びている。 「か、かわいいとか言うなっ!」 ひとつ間を開けてそう突っ込むと、胸の辺りを撫でていた砂羽にきょとんとした顔で見つめられた。 「……なに怒ってんの?」 「そ、そりゃあ女に言ったら喜ぶかもしれないけど……俺、男だし。」 「それは知ってるけど……。男でも、かわいいもんはかわいいと思うけど?」 「ばっ……!」 照れも恥じらいもなく淡々と話す砂羽に、耳の後ろが熱くなる。 そんな俺の顔を見てふわんと甘い顔で微笑みながら、子供にするように頭を撫でられて耳裏を啄まれる。 照れてるのが馬鹿らしくなって視線を散らすと、こつこつと近づいてくる足音があるのに気が付いた。 思わず無言で見つめ合い、その足音が遠ざかるのを静かに待つ。 触るのも躊躇われて砂羽の背中から手を離したのに、砂羽は足音には構わずシャツ越しに触れていた胸を捲りあげ、直接腹を撫で始めた。 脇腹をくすぐるように丸く撫で、へその窪みを指先で押される。 空気が漏れるような声を必死で抑えていると、砂羽がゆっくりと唇を合わせてきた。 隙間がないようにぴったり重なったお陰で声はこもったが、へその辺りを弄っていた指が乳首をつまむように捏ねられて、背にしていた扉に背中を思い切りぶつけてしまった。 「ふ……んっ!っ!!」 舌を吸われながら両手で乳首を弄られる。 弾くように刺激され、潰すように捏ね回され、びんびんに尖ったそこを掠める指先に涙が溢れる。 声がだすことを許されない状況で、散々撫でられたせいで前は既に湿っていた。 荒い息を漏らしながらも、必死に口を押えて目をぎゅっと閉じていると…… 砂羽の指がそっと離れたのを感じて目を開けた。 「行ったね。」 いたずらっ子のように微笑む砂羽を睨むと、ズボン越しに俺の中心を揉み込むように包まれた。 「ってか、気づかれたらどーすんだよ?」 「鍵締めてるし、覗かれない限り平気だよ。」 「覗くって……。」 そんな奴いねえだろうとため息をついていると、ハーパンを下げられ直接そこを撫でられる。 俺が初めてなのが信じられないほど1回1回で確実に腕を上げる砂羽の手つきに、少し落ち着いてきた息がすぐに上がる。 「でも、ヒナの声は聞かせたくないかも……。」 切ない声でそんなことを言うと、先ほど痛いくらいに尖らされた乳首に甘い吐息がかかる。 その刺激ですらもうやばくて、砂羽に包まれた性器の先からとろりと愛液を漏らす。 そのままやわやわと揉み込まれ、舌を吸われた刺激だけで呆気なく手の中で果てた。 「ほら、やっぱかわいい。」 俺のことを抱きしめながらそう笑われ、もう否定する気にもなれずに砂羽の肩にこつんと額を落とす。 「……早く、欲しい。」 イっただけではまだ腰の奥は疼いたままで、砂羽の背中にぎゅっとしがみつくと…… 膝で抱えるように抱きなおして、ゆっくりと指が入ってきた。 「好き?」 「え?」 「ここ触られるの、好き?」 ナカを掻き混ぜる指が俺の弱いところを捉え、そこを確実に狙って追い詰めてくる。 先ほどの甘い顔ではなく、切実な何かをのせた瞳に誤魔化すことも出来ずにこくんと静かに頷く。 「ん……好、き。」 「俺のことは?」 「……え?」 その質問にあまりにも驚いてきゅっと砂羽の指を締め付けると、苦笑しながら砂羽が付け加える。 「俺とするの、好き?」 「す、好きじゃなきゃ……こんなに毎日しな。」 「い」という最後の言葉は砂羽の唇に奪われて、ナカをかき乱す指が増やされた。 何度も好きかと問われて、それに何度も頷きながら譫言のように同じ言葉を繰り返す。 本当は砂羽自身が好きだという気持ちを込めてそう言うと、焦らすことなくいいとこを何度も擦りあげられて、悲鳴のような嬌声を上げる。 もうイきそうだと砂羽のシャツを引っ張って促すと、高ぶった硬いモノがゆっくりと入ってくる。 脈立つそれにふくらはぎが震え、上下に揺さぶられて腰が砕ける。 窮屈であまり満足な体勢はとれないものの、そのじれったさすら快感にのせて、ほとんど抱えられたまま何度も絶頂を味わった。

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