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 僕はいつものように学校に向かった。  足取りは決して軽くないけど、周りと合わせるように努めていた。 「拓真(タクマ)ー、おっはよ!」 「おはよう、大木(オオキ)くん。」  クラスメートの大木くんがいつものように挨拶をしてきた。  僕は笑顔で返す。 「あー!拓真は今日も可愛いなぁ!」 「残念でした。僕は男子です。」 「いいの!男子でも拓真なら俺はOK。」 「もー。」  大木くんのお陰で僕はクラスの輪に入ることが出来ている。  今もこの笑顔に救われている。  人懐っこくて、運動も出来て、みんなに好かれている大木くんは憧れだった。 「大木くんはカッコいいのに。」 「もー、拓真に言われるのが1番嬉しいぜー!」  丁度校門に入ろうとしたところで大木くんがギューっとしてきた。 「あー、拓真の抱き心地サイコー。」 「大木くんってば、もぉ。」  いつものジャレ合い。少し安心する。  だけど今日は違った。 「お前ら仲良いなー。」  校門の傍に立っていた人が僕たちを見て笑った。 「あ、まっつんおはー。」 「まっつんじゃなくて、松井(マツイ)大先生様と呼べ。」 「無理無理ー。出席簿忘れちゃう人は大先生にはなれませーん。」 「おうおう言ってくれるじゃねーか。月宮(つきみや)も馬鹿の相手大変だな。」  その人は僕に同情するように困った笑顔を向けてくれた。  それだけで僕の心臓は五月蝿くなる。 「お、おはようございます、松井先生。」 「おはよう、月宮。」  貴方の名前を口にすることに緊張する。  貴方が僕の名前を呼んでくれることに戸惑う。  僕の表情は普通だろうか、顔は赤くなってないだろうか。  松井先生、僕たちのクラスの担任、みんなの「まっつん」。  僕は貴方にどうしよもなく恋をしています。

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