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「まっつんさー、こんな重いモン月宮1人に運ばせんなよ。」
職員室に入って問題集の山を先生の机に置いた。
置くなり宮北くんが先生に抗議を始めた。
先生はバツが悪そうに宮北くんを見る。
「だって絶対宮北が一緒だと思ったし。悪いな、月宮。」
「い、いえ。僕は…大丈夫だったんですけど…。」
「本当かぁ?お前細すぎだし。」
先生の綺麗な手が、僕の頼りない腕を掴む。
どうしよう、先生が、僕に触れている。
「あ、セクハラ。」
「あ?なんでだよ。コミュニケーションだろ。」
「なんでもクソもねーよオッさん。」
「失礼な!まだピチピチの29歳だい!それに月宮は男だし、なぁ?」
ズキッ
そう、僕は男で、先生も男。
分かりきったことなのに、突きつけられると胸が痛む。
「あ……の……。」
「ん?」
「せ、先生…まだ、20代ですから……オッさんなんかじゃない、です。」
「さすが月宮!ご褒美にいい子いい子してやろう!」
グイッと腕を引かれて、先生との距離が近くなる。
そして先生のあたたかな手が、僕の頭をクシャクシャにする。
「男子高校生にいい子いい子って……。」
「だって月宮はいい子だもん。」
「だもん、ってキモいっす。月宮、行こうぜ。」
宮北くんの強い力で先生から離された。
僕は慌てて先生に頭を下げて、宮北くんのあとをついていった。
先生の温もりが、残り香が、僕を支配する。
***
「まーついくーん。」
「何すか。」
「生徒に手ぇ出しちゃだーめですよー。」
「別に撫でただけだし、相手男子だし…。」
「授業出る前に顔洗った方がいいですよー。赤面。」
「ぐぬぬ……。」
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