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第11話

「松浦先輩。あの白いワンエイティーは、友達の車なんですか?」 隣に立つ先輩を見上げて問えば、違う違うと楽しそうに否定された。 友達のじゃなければ…、どういう事? と思ったけれど、違うと言ったのはその部分じゃなかった。 「あれ、ワンエイティーじゃないよ~」 「え?」 間違えて覚えてた? 固まる僕の肩をポンポンと叩いた松浦先輩は、白のワンエイティー(に見える)車を指さしてこう言った。 「フロント部分はワンエイティーだけど、ほら、今リアが見えるでしょ?」 「…あれ…?」 後ろ側はシルビアに見える。…どういう事? 「あの車の本体はシルビアでね、フロントにワンエイティーの顔をくっつけてるの」 「そんな事、出来るんですか!?」 ビックリした。だって、別の車に別の車のボディをくっつけるなんて…。 「シルビアとワンエイティーは兄弟車だからね~、外見は違うけど実はサイズが同じ」 「……凄い…ですね」 「ちなみにあれは、前がワンエイティーで後ろがシルビアの“ワンビア”。それとは逆に、前がシルビアの顔で後ろがワンエイティーの“シルエイティー”っていうのもあったりする」 「………」 学校の授業よりも難しい。混乱してきた。 そもそも車って、買ったものをそのまま乗るんじゃないの? レゴみたいに自分でくっつけて組み立てる物だった? そうこうしている内に、名波先輩達の車は駐車場を出て下へ走り去っていった。 「ほらほらノノちゃん。俺達もベストポジションに向かいましょうか」 「ベストポジション?」 「そう、通称“ギャラリーコーナー”。いちばん見応えのある場所だよ」 見応えのある場所。 それはもちろん、走りの見応えがある、という事なんだろうけど、なんだかもうここが公道だという事を忘れてしまいそうになる。大丈夫なのかな。 松浦先輩に背を押されて促されながら歩き出し、そのまま“ギャラリーコーナー”へ向かうのかと思ったら、違った。何やらまた見知らぬ人の所へ向かっている。 「純く~ん、7コーナーまで乗せてってー」 「うわっ、苑さん!OKです、すぐ出られます!」 地面に座り込んでいた年上っぽい男の人は、松浦先輩の言葉に素早く立ちあがり、すぐ横にある真っ黒のランサーエボリューションに乗り込んだ。 松浦先輩は、勝手に後部ドアを開けて乗りこんでいる。 「はいノノちゃんも乗って乗って」 「お…邪魔…します」 恐る恐る乗りこみドアを閉めると、すぐさま動き出す走り仕様のランサー。 名波先輩の車もそうだったけれど、この車も内部に太いパイプのような物が通っている。 手を伸ばしてそれに触れたら、隣にいる松浦先輩が教えてくれた。 「それね、ロールバーって言って、車が転がって上下逆さまになったりした時、屋根がグシャって潰れないようにする為の物。中の人間が怪我をしないようにね。簡単に言うと、ボディの補強」 「………上下逆さまって…」 絶句。 走り屋ってそこまで危険なの? そんな事を先輩達はやっているの? …もしも先輩達が怪我をしたら…って考えると、怖くなる。 「もう着くからねー」 僕が青褪めている内に、車はギャラリーコーナーという所に到着したらしい。 窓越しに見てみると、道が物凄く深いカーブになっている場所だった。 スリップしてしまった時の事を考えてなのか、カーブの外側に当たる部分に広く避難帯が設けられている。 僕達がいるのは、まさにその場所。 避難帯の中に車を止めて、これから上がってくる車の走りをここで見るらしい。 「純くん、ありがとう~」 「いえいえどういたしまして!また戻る時は声かけて下さい」 「ありがとうございました」 外に出る際、僕もその人に頭を下げると、運転席から振り返った彼はにっこりと微笑んでくれた。 「さぁて、そっちに移動しようか」 松浦先輩に腕を掴まれて、避難帯の下の方に移動する。 「時々失敗して突っ込んでくる車がいるんだよねぇ。そういう場合、大抵はあっちの上の方に突っ込んでくから、車外に出て見るならこっちの下の方にいる事」 「はい」 見るだけでも命の危険があるって事なんだ。 …なんでそんな危険な事…。

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