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第10話

「あの、用件はそれだけですか?」 渉は素っ気なく言葉を返した。 「わざわざ送って頂いて、ありがとうございました。父は誰とも付き合う気はありませんので、どうぞお帰り下さい」 内心は腸が煮えくり返るくらい憤っている渉。 しかし、相手は湊斗が12年も世話になっている会社の社長。 父子家庭で生活も苦しかった湊斗親子に手を差し伸べてくれたのは、引退し今は会長となっている先代の社長。この男の父親だ。 恩を仇で返す訳にはいかないと、渉は踏みとどまったのだ。 湊斗を間に挟み、無言で睨み合う二人。 「ーーなるほど・・・そういう事か・・・」 渉の顔は、息子としてではなく、雄の色香を纏わせていた。それに勘づいたのだろう、早川は苦笑いを浮かべた。 「今日の所はこれで失礼するよ」 去り際に然り気無く早川に臀部を撫でられ、「は、早川しゃん‼」湊斗はすっとんきょうな声を上げ、真っ赤な顔で慌てて口を押さえた。 「君のお父さんは、本当、愛らしいな。見てて飽きない。側にいれる君が羨ましいよ。でも、まだ、諦めた訳じゃないからね」 宣戦布告ともいえる発言に、怖じ気づく渉ではない。13年もパパを独占してきたのだ。これからも大好きなパパは自分のもの。今さら誰かに渡す気などさらさらない。 「早川さん、俺たちラブラブですから、心配無用ですよ」 渉は、狼狽える湊斗の腰に腕を回しそっと抱き寄せた。

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