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第2話
突然の乱入者、つまりはオレによって、しっかり手に持っていた筈のカッターナイフを叩き落された彼は、両目をまんまるくして、分かりやすい驚きを見せた。
割と灯りの多い公園で、彼がまんまるにしたままの目がダークグリーンをしているのがよく分かった。
まんまるの目は次第に細められて、驚きで溢れていたダークグリーンに別の感情が添えられる。
悲しそうで。
怒っていて。
今にも涙を流しそうに、震えていた。
余計な事をしたかな。
厄介事には首をつっこまない主義のオレとしては、自分のらしくもない行動を思い返しながら、足元に落ちたカッターナイフを見る。これ以上彼のダークグリーンを見ていられなかったし、そこから涙が零れる瞬間なんて、尚更見たくなかったから。
でもカッターナイフを見ていて、後悔と同時によかった、っていう気持ちも生まれていた。
見ず知らずの誰かさんだけど、このカッターが彼の血で汚れたりしなくてよかった、って。彼にしてはとんでもない事をしでかした邪魔者なのかもしれないし、オレの安堵は自己満足っていうのかもしれないけれど。
「なんで……? なんでお前は、こんな事したんだよ……」
震えた声で、自己満足だった事はすぐに分かった。
ただ、オレの事を責めているだけには聞こえなかった。
邪魔された事に落ち込んで。怒って。邪魔者であるオレをひたすらに責めれば満足する様子はなく、彼の声は理由を求めていた。
あまりに切実な声音だったから、オレは自分の些細な理由を応えるのに躊躇う。なんとなく。気付いたら体が動いていた。そんな答えで済ませてはいけないんじゃないかと思わせるだけの何かを、大して年齢も変わらなそうな彼が背負っているように思えたから。
でも、だからこそ言わなきゃいけないんだろう。
彼は必死に答えを求めているから。オレは彼の世界に踏み入ってしまったから。「なんとなく」そんなバカげた答えを言って、彼に罵倒なりなんなりされるのが、オレの見せられる誠意に思えて。
……さすがにカッターナイフで切りかかられたら、応戦はするけど。
オレはどんな罵詈雑言も受け入れる覚悟で口を開いた。
「なんとなく。つーか、オレもよく分かってないんすわ。アンタの姿が公園の外からも見えて、気付いたらアンタのカッターナイフを叩き落してたんだから」
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