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第4話
「……悪い。そんな事言ってもらえると思わなかったんだ」
オレがおろおろしていたのが、泣いている彼にも分かったんだと思う。
彼は必至で涙を拭おうとしながら、ちょっと震えた涙声で謝った。でも彼が必死で涙を拭おうとしても、涙はダークグリーンから溢れて、零れて。
ハンカチでも差し出せればカッコイイのかもしれないけど、持っていなかったオレは、ただ彼の頭を撫でていた。
見ず知らずの人間に頭を撫でられるなんて不快だったかもしれない。
そう思ったのは、撫でた後。
慌てて言い訳を探しているオレに、彼はまた、ダークグリーンをまんまるにして、さっきよりも大粒の涙を零したから。
「そんなに嫌だったんすか……」
自業自得だけど、多少なりともずきっときて、拗ねた子供みたいな声が漏れていた。
オレが慌てて撤回するより、「そんな事ない!」彼がきっぱり言い切る方が早かった。
まだ声は涙で震えていたし、白い頬には涙の痕が目立ったし、ダークグリーンは相変わらず濡れて、震えている。
でも彼はきっぱりと言って、それから、小さく笑った。
寂しそうに。
幸せそうに。
花が咲いたような笑顔って言葉を、彼の笑顔を見てオレは思い浮かべてた。
「嫌じゃない! ただ、びっくりしただけ。……こんな事されたの、初めてだから。それこそ、親にも撫でられたこと、なかったから」
でも、そんな笑顔で言われた内容は、オレの頭をグラグラさせた。まさに、殴られたような衝撃だった。
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