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第2話
退院の日は、比較的すぐに訪れた。
医者はまだ記憶が戻っていない真湖 のことを心配して、定期検診を忘れないよう念押して見送ってくれた。
オレが毎日つきっきりで真湖を見守っていて、恋人かなにかだと思ってくれていた関係者の人達はみんな、オレにも「よかったね」と声を掛けてくれた。
「お世話になりました。オレ、真湖を絶対幸せにします!」
「海 、さすがにちょっと恥ずかしいよ」
真湖は元から体格がいい方じゃないけど、昏睡状態でやせ細ってしまっていた時より、大分肉もついたし、色白だけど健康そうになった。
今はオレの言葉に照れてくれたのか、少し頬を赤らめている。
かわいい。幸せにしないと。幸せにしたい。そんな風に改めて強く思うし、強く心に誓う。
でも同時に、恋人だって嘘をついたことには、罪悪感が残る。
オレと真湖の関係、本当はどうなるんだろう?
真湖がサイゴに話したのは多分オレだけど、恋人同士じゃないし、友達同士でもない。
なんなら、あの時カッターナイフを叩き落すまでオレ達は、顔も名前も知らない他人だったし、真湖はオレの名前なんて知らなった。
1歩間違えればストーカーだ。
それも真湖に嘘までついて、最低だと罵られても、しかたないし、当然だと思う。
だけどオレは真湖に生きていてほしかったんだ。
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