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嘘吐きの告白

「一緒に生きよう。一緒に幸せになろうね。真湖(まこ)」  幸せってこういうことを言ったんだって、2人暮らしが始まってから気が付いた。  流れる時間が甘い。なんでもないような1日なのに、すごく愛しいものに思える。手放したくない。  でも、毎日が幸せであればあるほど、オレは不安になった。心配だった。胸がずきずきと痛んで、締め付けられて。  いつか「嘘つき」と罵倒されて、この幸せが崩れ去ってしまうんじゃないかと。  嘘の上に成り立った幸せは、きっとひどく不安定だ。  だから頑張って嘘を真実のように振る舞う。時々息が詰まってしまうけど、でも、やっぱり2人で生きていく幸せのためには、嘘つきの罰として甘んじて受けるべき痛みだと思う。 「真湖」  金色が眩しいほどにキラキラ輝く。やさしい声音はオレの胸を締め付けて、オレのことをやさしく包む。  幸せだ。幸せだよ、(うみ)。  女が重要視される、それなりに有名な家。そこに生まれた男なんて、彼等にとっては邪魔でしかなかったのに。  そんなオレが、こんな幸せを感じられるなんて、夢にも思わなかった。  オレは2度、海に救われている。そして今、こうして幸せをもらい続けている。  でもオレは、そんな海に、目覚めた瞬間から嘘をついているんだ。記憶喪失だ、なんて。

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