20 / 24
嘘吐きの告白
「一緒に生きよう。一緒に幸せになろうね。真湖 」
幸せってこういうことを言ったんだって、2人暮らしが始まってから気が付いた。
流れる時間が甘い。なんでもないような1日なのに、すごく愛しいものに思える。手放したくない。
でも、毎日が幸せであればあるほど、オレは不安になった。心配だった。胸がずきずきと痛んで、締め付けられて。
いつか「嘘つき」と罵倒されて、この幸せが崩れ去ってしまうんじゃないかと。
嘘の上に成り立った幸せは、きっとひどく不安定だ。
だから頑張って嘘を真実のように振る舞う。時々息が詰まってしまうけど、でも、やっぱり2人で生きていく幸せのためには、嘘つきの罰として甘んじて受けるべき痛みだと思う。
「真湖」
金色が眩しいほどにキラキラ輝く。やさしい声音はオレの胸を締め付けて、オレのことをやさしく包む。
幸せだ。幸せだよ、海 。
女が重要視される、それなりに有名な家。そこに生まれた男なんて、彼等にとっては邪魔でしかなかったのに。
そんなオレが、こんな幸せを感じられるなんて、夢にも思わなかった。
オレは2度、海に救われている。そして今、こうして幸せをもらい続けている。
でもオレは、そんな海に、目覚めた瞬間から嘘をついているんだ。記憶喪失だ、なんて。
ともだちにシェアしよう!