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第2話
あの日、1番に飛び込んできたのはキラキラ光る金色。
その色は、オレが持っていた1番新しい記憶で、オレが持っていた中で1番強烈な色だった。
忘れるワケ、ない。
忘れられるワケ、ない。
親戚や家族はオレをいらないと言った。女であればと罵倒した。
父親はオレが男だったからと責められ続けたから、オレを嫌っていた。オレのせいだって罵った。
撫でられる手のぬくもりを初めて教えてくれたのが、その金色だったのだから。
自殺と復讐を決めたオレは、もう引き返さないと決めたその日に、初めて人のぬくもりを知ることができた。
自殺を止めてくれた。
オレを人間と見てくれた。
まさか生きている内に人間と見てくれる人に会えるなんて思わなかったけど、オレはそれで自殺を止められなかった。
生きていても、しかたなかったから。
結局あのままじゃ、華宮 はオレを捨てたから。
ただ、カッターナイフを抱えて飛び下りたのは、我ながら少し女々しかったと思うけど。
てっきり死んだと思った。死ねたと思った。
だけどオレは目を覚ました。目を覚まして、その金色が目に入った時。
一瞬遅れて、時間の流れを少しだけ金色の表情から感じ取った時に。
「……ごめんなさい。あなたは、誰ですか?」
オレは、記憶に焼き付いて離れない金色に対して、そう聞いていた。
彼に1つ、大きな嘘を告げた。
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