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第4話

 (うみ)がどうしてあんな嘘をついてくれたのか、今でもオレには分からない。  海がオレと過ごしていて本当に幸せなのか。オレはちゃんと生活できているのか。眠っている時に開いてしまった距離は、高校生のまま成長していないんだろうオレの精神は、海の負担になっていないか。  幸せだからこそ、そんな不安もオレの胸をよぎる。  それに、何より、オレのついた嘘がバレてしまっていないかが不安で、不安で。  海に出会ってから、離したくないという気持ちを知った。幸せを知った。  手に入れたなにかを、離すのは辛いことだって、知ってしまった。  だからオレは、嘘をつき通すことに決めたんだ。  ごめんな、海。  もう少しだけ。できれば、今度こそオレが本当に死ぬまで。  この幸せに、お前の好意に、海に溺れていたいんだ。 「海、好きだよ。オレ、今、すごく幸せ」  嘘の上に成り立っているけど、この想いは本物。それだけはどうか、信じてもらえますように。  海に伝わっていますように。 「オレも幸せっすよ!」  海の言葉に、自然、オレは笑顔を浮かべていた。

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