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歪んだ執着心2
上原は吾妻を送り届けて、マンションの外に出た。
ただ事でない様子の吾妻に驚いて追いかけたが……ネクタイをしていない乱れたシャツ。泣いたあとのような瞳。崩れた髪。
───誰に、何をされたんだ?
問いただしても吾妻は絶対に言わないだろう。だが、上原が吾妻の肩に触れた時、吾妻は拒否しなかった。たぶん未遂だ。
もし男に犯されでもしたのなら、吾妻は上原に触れられる事にも耐えられないはずだ。たから、最後まではされず、途中で逃げ出したのだろうと思った。
ずっと、吾妻の事は気になっていた。
人がよくて、とろくて、可愛い後輩だ。
上原はなぜか吾妻に対して強い独占欲を抱いてしまう。吾妻はもともと人付き合いが苦手だが、上原は密かに吾妻が他の人間と仲良くなる事がないよう根回ししていた。
わざとミスを目立たせたり、その後に自分がフォローする事で「先輩に迷惑をかける後輩」のように周囲には見えるように立ちまわった。
上原は社交的で仕事もできるし、外見も魅力的だった。大人しく繊細な吾妻は、根暗で愚鈍だと思われていた。上原は優しい先輩に見えるようでいて、吾妻をわざと孤立させていた。
彼が他の奴を頼る事が許せなかった。
……でも、追い詰めすぎた。
吾妻は会社を辞めて引っ越してしまった。電話番号も変えて、完全に上原と縁を切った。その事は上原にとってはショックだった。
だが、偶然再会した。しかも二度も。
───吾妻。やっぱりお前は俺がいないとダメなんだよ。
上原は普段の爽やかさからは想像できないような表情で暗く微笑んだ。
吾妻の住んでいる場所は分かった。
誰か他の男がちょっとかいをかけているようだが、吾妻はコミュ障のケがある。すんなりと男同士の関係など受け入れられるはずがない。
もし吾妻がレイプでもされれば、彼の心はボロボロになるだろう。その時でもかまわない。
今度こそ、自分しか頼れないように。自分だけに依存するように、上手く接しようと思った。
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