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秘密1

翌日は休みだったので、吾妻は昼前まで泥のように眠っていた。枕元に置いていたスマホの着信音で目が覚めた。 「……はい」 寝起きの掠れた声で出ると『優雨ちゃん?』と、正志に名を呼ばれた。 「ま、正志さん!?」 『うん。ごめん。寝てた?』 吾妻は慌てて起き上がった。 「今起きたとこです。何かありました!?」 『なんも。ちょっとひと段落ついたから、昼飯でもどうって思ったんだけど……疲れてるみたいだから、ゆっくり休んでてね』 吾妻の掠れた声を聞いて、正志はそう言った。いつも正志は吾妻を気遣ってくれる。 「大丈夫です。ちょうど起きようって思ってたし」 『無理しないでね』 「無理してないですよ」 吾妻の言葉に正志は笑った。 『じゃあ、そっち行くね。30分後? 15分後? どれくらい?』 吾妻の住むマンションは工房から歩いて5~6分の場所だ。 「えっと。にじゅ、15分後で」 『わかった。20分後くらいに行くね』 通話を切って、吾妻はほっと息を吐いた。正志の声を聞くと安心する。 いつだって不器用な吾妻の事を理解してくれて、居心地の良い空気を作ってくれる。 吾妻はベッドから下りて、顔を洗おうとバスルームに入った。 「ぅわ……」 昨日泣いたせいで目が腫れている。正志には上手く誤魔化さないと。 吾妻は顔を洗って、パジャマから着替えていると、またスマホが鳴った。 『なんか買ってくから、優雨ちゃんちで食べよ。駅前のパン屋かインド料理屋か、洋食屋。何がいい?』 「じゃあ……洋食屋さんで」 『いつものオムライス?』 「はい」 『了解。また後でね』 慌てて出かける準備をしなくて済んだ。吾妻はホッとして、少し部屋を片付ける事にした。たいして散らかってはいないけれど。 吾妻の部屋は物が少ない。これといった趣味もないので必要最低限の物しか買っていなかった。 20分後、部屋のチャイムが鳴って正志が来た。 「おはよ。優雨ちゃん」 洋食屋のテイクアウトの弁当を手に、正志がニカッと笑った。 「もうお昼ですよ。寝すぎちゃった」 吾妻は苦笑しつつ、正志を迎え入れた。

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