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嘘2

  バスルームから出た吾妻は、冷蔵庫からミネラルウォーターを出して飲んだ。 喉が渇いていたみたいで、一気に半分ほど飲み干した。 槇から今日は休んでいいと言われていたので、とりあえずまたベッドに戻り目を閉じた。 まだ何も考えたくなかった。 ウトウトしていると、チャイムの音でハッと目が覚めた。 すっかり暗くなっている。何度かチャイムが鳴って、今度はスマホの着信音が鳴り出した。 正志さんだ! スマホは鞄に入れっぱなしだったが、吾妻の部屋を訪ねてくるのなんて正志しかいない。 槇の手伝いはどうだったか、きっと心配して来てくれたのだろう。 吾妻は出る事ができずに、ベッドの上でじっと体を固くしていた。 しばらく着信音が鳴り続けたが、ふっと途切れた。 きっと部屋の外から着信音は微かに聞こえているはず………そう考えると吾妻はきゅうと胃が痛くなった。 できるだけ音を立てないように、気配を消して鞄の中からスマホを取り出す。 昨夜から何度も正志からの着信履歴が残っていた。槇に抱かれていた時間だ。 『優雨ちゃん。初日お疲れ様。大丈夫だった? 晩ご飯一緒に食べる?』 メールを開いて吾妻は唇を噛みしめた。 どうしよう。きっと正志は不振に思う。 また槇社長に飲みに連れていかれたって事にしよう。二日酔いで寝てて、電話に出れなかったって、うまくごまかして……… 「………うっ」 吾妻の目からころりと涙の粒が零れた。 こんな風にごまかすことを必死に考える自分が情けなかった。 純粋に吾妻の事を気にかけて心配してくれる正志を騙すことも。 「………なんで、こんなことになっちゃったのかなぁ………っ」 吾妻はスマホを握りしめたまま声を殺して泣いた。泣きやんでから、ぽつぽつとメールを打った。 『ごめんなさい。槇社長に飲みに連れていかれて。二日酔いで寝てました』 少しして正志から返信が来た。メールの内容を読んで吾妻の顔から血の気が引いた。 『大丈夫? さっき部屋まで行ったんだけど、寝てたんだね。ごめんね。何か持って行こうか? 今、槇社長と一緒だよ』

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