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昼間の情事1

  槙の言った通り、カフェのランチは美味しかった。 少なめではあったが、吾妻は全部食べて「ごちそうさまです。美味しかったです」と、槙に礼を言った。 律儀な吾妻に槙は笑った。 吾妻は可愛い男だ。真面目だし、仕事もきっちりしている。 だが、年のわりにスレておらず、素直すぎる。その辺の女よりも可愛らしかった。 「コーヒーは上で飲もう」 槙はそう言って立ち上がった。 店員に用意させた持ち帰り用の店のロゴの入った紙コップを二つ持ってカフェを出た。 吾妻は慌てて槙について歩き、両手がふさがっている槙の代わりにエレベーターのボタンを押した。 事務所に入った槙は吾妻にコーヒーを渡して座るように言って、自分は向かいのソファに座った。 「あの、西野さんは?」 「休みだ。仕事も片付いたしな」 「えっ」 ………じゃあ、なんで今日ここに? 「清古のところは何年になるんだ?」 吾妻の戸惑いを余所に、槇は聞いてきた。 「三年です」 「まだ三年なのか。清古とはもっと長い付き合いなのかと思った。前は何の仕事をしてたんだ?」 そうして槇にあれこれ聞かれて、コーヒーを飲みながら世間話のような会話を続けた。 槇がよく分からない。 自分のような平凡な男を強引に抱いた。それなのに平然と何事も無かったかのように接してくる。 槇に良いように振り回されている自分が情けなく感じるが、正直なところ、槇との会話は嫌いではなかった。 コミュ障気味の吾妻だが、槇はリードするのが上手い。気付けば槇のペースになっていた。 「さて」 槇は空になったカップを持って立ち上がった。自分が捨てると立ち上がろうとした吾妻を座らせて、槇はカップを捨てに給湯室に入った。 給湯室から戻ってきた槇は吾妻の隣に座った。 「!?」 槇は驚いて硬直する吾妻の肩を抱き寄せた。吾妻はその腕を外そうともがいたが、更に強く抱き寄せられてしまう。 「槇社長! なにを……!?」 「体の疲れは取れただろう?俺に付き合ってもらう」 「あのっ! 一度だけだって……」 「誰も一度きりだなんて言ってないぞ」 槙は低く笑いながら、吾妻の耳にキスを落とす。 「ひっ」 吾妻はビクリと肩を揺らして抵抗したが、槇は耳に直接吹き込むように囁いた。 「約束は約束だ。お前も納得して俺に抱かれた。あの夜も合意だっただろう」 「違う………っ」 槇の手がしゅるりとネクタイを解いて、シャツのボタンを外していく。 吾妻は血の気が引いた顔で槇にやめてくれるよう哀願した。 だが、槇は止める気はさらさら無かった。 今朝、吾妻の顔を見た時からもう一度抱きたいと思っていた。 「違わない。取引きだっただろう。月曜までは俺に付き合ってもらうぞ」 「げ、月曜日?」 「ああ、そうすれば清古の元に帰してやる。だから大人しくしろ。気持ちよくしてやるから………なぁ、吾妻。あの夜は気持ちよかっただろう。お前は俺のを突っ込まれて、エロい顔でイキまくってたもんな」 「な、なんてことを言うんですか!?………あっ!」 槇の不埒な手がズボンのベルトにかかる。吾妻は半ばパニックになって、その手をどかせようともがくが槇の言葉に固まった。 「清古に全部言うか?」 「や、やめてくださ………」 「あと二日、俺に付き合うだけで終わりだ。悪いようにはしない。清古との仕事は続けるし、酷い事はしない。気持ちいい事をするだけだ。ほら、いい子だから手をどけろ」 吾妻は震える唇を噛みしめて、大人しく手を退けた。槇はベルトを外し、ファスナーを下ろした。 「………あっ」 槇の大きな手がズボンの中に入り、萎えたままのペニスを握りこんだ。 大胆に揉みしだかれて吾妻は益々体を固くした。 吾妻のうなじに手を添えて引き寄せ、槇は口付けた。すぐに舌を絡ませ、濃厚なキスで緊張を解していく。 「ん、んんぅ………ふ、う」 吾妻の頬に赤みが差し、ペニスは緩く勃ち上がり始めた。真昼間の事務所のソファの上で始まろうとしている淫らな行為に吾妻は怯えた。 今日は酒も入っておらず、しらふのままだ。今からまた槇に抱かれるのだと思うと怖くてたまらない。 それなのに……体の奥は熱くなっていく。 ─────嫌なのに………どうして? 「………硬くなってきたぞ」 「あ、あ………っ」 槇の手が下着の中に入り直接ペニスを握った。亀頭部分をくにゅくにゅと揉まれて、吾妻の腰がびくびくとは痙攣した。 「やっ、嫌!」 「濡れてきたな………敏感だ」 吾妻は唇を噛んで声を耐える。 悔しい。また好きなようにされてしまう。 そんな吾妻の表情を見つめながら、槇は低く喉で笑った。 そうやって無駄な抵抗を試みる吾妻は男を煽っているのに気付きもしない。感じまいとする顔が妙にそそるのだ。 槇は亀頭を手で包み込み、密着させてクプクプと刺激するように愛撫した。 「あ! あっあ………やめてくださっ………」 吾妻がたまらずに高い声で鳴いた。 槙はその声にぞくぞくする。普段の野暮ったく地味な姿からは想像もつかないほどエロい顔と声だ。槇の下肢も熱く滾っている。 「全部脱げ」 「………っ」 槇に命じられて、吾妻は首を左右に振った。 「スーツを汚したくはないだろう? 全部脱ぐんだ」 槇は吾妻の亀頭から手を離して立ち上がらせた。槇はソファに座ったままだ。 まるでストリップでもするように、目の前で脱いで全裸になれと言っているのだ。 吾妻は俯いて、もたもたと服を脱ぎ始めた。スーツのジャケットとシャツを脱いで、ズボンを脱ごうとしたとき 「後ろを向いて脱げ。俺に尻を見せるようにな」 「………っ!」 屈辱的な言葉に吾妻は涙目で槇を睨みつけたが、諦めたように後ろを向いてズボンを脱いだ。 最後にトランクスを脱ぐのを躊躇っていると、槇が「そのままでいい」と言ったので、吾妻は少しだけほっとした。 「あ!」 トランクスの裾から槇の手が侵入してきた。尻から鼠蹊部をフェザータッチで優しく撫でまわす。吾妻は肌を泡立たせて息を飲んだ。 「全裸よりこっちの方がエロイな」 「………最低です」 「その最低な男に今から泣かされるんだ」 「………っ」 「前かがみになって、ローテーブルに手を付け」 再び命じられた吾妻は、槇に尻を突きだすように身を屈めて、羞恥に震える手をテーブルに付いた。

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