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第6話 セカンド。
椿は涼と並んで歩きながら彼の様子を伺っていた。
さっきからずっと黙った切りだ。
更衣室で俺を見てから、涼の態度が明らかに可笑しい。
「涼?」
『。。。』
「涼!」
『えっ?あっ。はい。今、何か言いました?』
「お前。何か有ったの?」
『。。え? 何でですか?』
「何でって。。お前から誘ったのに黙ったままだし、何か悩みでも有るの?」
言えない。
貴方が原因だなんて。。
「言いたくないなら良いけど、、話ぐらいならいつでも聞くから遠慮は無しね。」
椿は目一杯背伸びをして、自分より15㎝も背が高い彼の頭を、子供をあやす様にそっと撫でた。
椿に触れられ、涼の胸がドクンッドクンッと波立った。
「俺、このマンションの2階だから、又明日な。」
椿は、涼の動揺に気付かないまま、笑顔で手を振りマンションの中へと消えていった。
涼は彼の後ろ姿を目で追いながら、その場から動く事が出来なかった。
暫くして、自分もマンションへ帰るべく重い足取りを引きずりながら歩き始めた。
これで良かったんだ。
椿は男だ。
俺が好きでもどうにもならない。
ましてや彼には、既に恋人がいる。
涼は、ふと、足を止めた。
恋人。。
椿の恋人は男だ。
それなら俺にも可能性が残されているんじゃないのか?
涼は我に返り、自分の有り得ない考えを否定するかの様に頭を横に振った。
しかし、一度過ってしまったその考えは消えるどころか深く頭を擡げ始めた。
男だと分かってる。
恋人がいるのも分かってる。
可能性が無いに等しい事も分かってる。
でも。
それでも、俺は。。
涼は踵を返し椿のマンションへと駆け出した。
2階。。
そうだ。
2階と言っていた。
エレベーターを待ち切れず、階段を一気に駆け上がった。
表札を端から順に見た。
一ノ瀬。。
有った!
此処だ!
涼はチャイムを鳴らす。
「は〜い!」
ドアの向こうから耳心地の良い声が聞こえた。
ガチャッとドアが開き、目の前に愛しい人が立っていた。
「あれっ?涼?どうしっ。。」
俺は彼を引き寄せ自分の腕の中に包み込んだ。
「。。涼?」
『好きだ。貴方が男だろうが恋人が居ようが構わない。』
「。。え?」
戸惑う彼を尻目に俺は告白を続けた。
『俺は男の貴方が好きなんです。彼氏と別れられないなら、それでも良い。セカンドで良いから。。俺は椿の男になりたい。』
俺の好きな人。
俺が愛して止まないその人は。
同性だと知った今でさえ、手に入れたいと思う程、魅力溢れる男です。。
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