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第8話 俺の条件・彼の願い。

「取り敢えず入って。」 俺は彼の腕をそっと振り解き、部屋へと招き入れた。 『あ。お邪魔しま、、す』 「今飲み物出すから、其処のソファーに座って。」 涼は戸惑いながらも部屋に上がり込むと意外そうな面持ちをして部屋の中を見回していた。 俺は珈琲を出しながら、涼の表情の変化に気が付いた。 「涼?どうしたの?」 『え?あぁ。何か椿さんの部屋らしくないなって。』 「俺らしくないって?」 『女の子が好きそうなピンクとか赤とかの色合いの物が多くて、何か椿さんの好みじゃない気がする。』 「。。。」 『あれ?俺、何か可笑しな事言っちゃったかな。でも、ついでだからもう1つ言っても良い?』 落ち着け。 涼は俺について何も知らない。 だから、彼が言った言葉に深い意味なんて無い。 「。。良いよ。何?」 『俺、今まで椿さんが女性だと思ってたんだけど、それは別として、椿さんが着ている服の色とかデザインとかも、う〜ん。上手く言えないけど本当に好きで着てるのかなぁって。。』 涼が何気無く放った言葉が俺の心を激しく揺さぶる。 自分の心を見透かされた気がした。 ここで涼を突き放さなければ、俺はきっと彼を手離せなくなる。 『椿さん?』 涼は俺の恋人が勝だと思い込んでるみたいだ。 「涼。さっきの話だけど、セカンドでも良いって言ったよね?」 『はい。』 「俺。恋人は勝一人だけど、それ以外にセフレは何人かいるよ。」 半分は嘘。 半分は本当。 恋人はいない。 セックスだけの相手なら何人かいる。 『セフレ。。?』 「うん。セックスする相手に不自由はしてないから、セックス無しで良いなら俺のセカンドになってよ。」 言った。 言ってしまった。 これなら愛想尽かすに決まってる。 『良いよ。』 「。。え?」 『セックス無しのセカンドになる。』 何? 何て言った? 普通、こんな話を聞かされたら怒って出て行くだろ? 「本気?本当に俺の男になりたいの?」 『うん。セックス無しでもセカンドでも、傍に居られるならそれで良い。但し、一つだけ俺の願いを叶えて。」 簡単な事だ。 彼の願いを叶えなければ良いだけだ。 それで終わる。 分かってる。 良く分かってる。 でも。 それでも、俺は。。 「。。言って。」 『セフレとの付き合いは全て解消して、心から大切に想える人とだけセックスして。その相手が勝さんだとしても構わないから。』 「。。どうして?」 『俺の好きな男が、自分を大切にしない事だけは耐えられないから。』

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