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第9話 歪な関係。

少しだけ。 彼に甘えても良いだろうか。 好きな男をセカンドにする。 嘘から始まる歪な恋人関係。 今はまだ全てを委ねる事は怖い。 それでも彼の傍に居たい。 こんな俺でも。 嘘つきな俺でも。 貴方は愛してくれますか? 『椿さん?』 「分かった。セフレは全て切る。」 『。。本当に?』 俺は携帯電話を手にし、彼の目の前でセフレ全員に電話を掛け、別れを告げた。 「これで良い?」 『うん!じゃあご褒美に抱き締めてあげる。』 彼はそう言って俺を優しく抱き締めてくれた。 「抱き締めるだけ?」 『。。え?』 「セックスは無し。でもキスは有りにしない?」 『俺は嬉しいけど、椿はそれでっんん。』 彼の言葉を唇で遮る。 触れるだけのキス。 心も身体も震えるキス。 好きな人とする初めてのキス。 俺を抱き締める彼の腕に力が籠る。 彼に抱かれてしまいたくなる。 俺はそっと唇を離した。 「今日からよろしくね。」 今の俺に出来る精一杯の告白だった。。 それから俺達の交際が始まった。 彼は勝に遠慮して、バイト先では少し距離を置いて接して来た。 週の半分以上は彼と過ごした。 映画を観に行ったり、ドライブしたり、互いの家を往き来した。 特別な事は何も無い。 セックスは無し。 キスは有り。 それ以外は普通の恋人同士の様な付き合い。 とても幸せな時間。 彼への想いが日を追う毎に募っていく。 だが週末には会わなかった。 彼は勝が俺の恋人だと思っているから。 彼は自分をセカンドだと思っているから。 勝は俺の過去も知っている。 彼には涼との事を話した。 「早く本当の事を言え。涼とちゃんと向き合え。」 そう言われた。 彼を好きなら 彼を失いたく無いなら話すべきだ。 分かってる。 信じていない訳じゃない。 でもやはり怖い。 もう少し、もう少しだけこのままで。。 付き合い始めてから半年が過ぎた。 勝に最近彼女が出来た。 彼に本当の事を言わなければ。。 今日話そう。 明日話そう。 何も言えないまま週末が訪れた。 その日、バイトを終え帰宅したのは深夜だった。 玄関のチャイムが鳴り、ドアを開けると彼の姿が在った。 週末には会わない筈の彼が、俺の元へとやって来たのだ。 彼の険しい表情を見て直ぐに気付いた。 俺のついた嘘がバレたのだと。。

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