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第10話 有りの侭の君を。。
「入って。」
あの日と同じ様に彼を部屋へと招き入れた。
『さっき勝さんと話した。彼女も一緒だった。』
勝の口から真実を聞かされた時の彼の気持ちを思うと、胸が苦しくなった。
こんな俺に愛想を尽かすのは当たり前だ。
自分の嘘が招いた事だ。
受け容れるしかない。
「そっか。」
『何で?』
「嘘付いてごめん。騙してごめん。。俺といるの嫌になったよな。」
『そんな事どうでも良いから。』
「え?」
『勝さんから全部聞いた。何で俺に話してくれなかったの?』
「ちょっと待って。何の話を。。」
『椿のご両親の事だよ。』
「あ。。」
『俺ってそんなに頼りにならない?信用出来ない?椿がどう思っていようが、俺にとって貴方は掛け替えのない人なんだよ!』
「信用出来ないなんて思ってない。」
『じゃあ、何?俺の事好きじゃないの?』
「違う。俺は...俺自身が嫌いなだけだ。」
『椿。お願いだから1人で抱え込まないで。俺には全部話して。』
涼が俺を自分の元へ引き寄せ抱き締める。
彼の優しさが俺の胸を熱くさせる。
俺のついた嘘をどうでも良いと言ってくれる彼。
こんな俺を掛け替えのない人と言ってくれる彼。
逃げちゃ駄目だ。
ちゃんと向き合わなきゃ。
彼の為にも俺自身の為にも。。
「。。母さんは父に似た俺の顔が嫌いだった。俺に女の子が好む色合いのものばかりを当てがった。」
「父さんは殆ど家に帰って来なかった。あの日。。母さんが家を出て行った日も、俺は独りきりで花火を見た。。」
涼は黙ったまま、俺の髪を優しくすいた。
「俺が愛した2人は俺の傍に居てくれなかった。俺は誰かを必要とするのが怖い。愛する事が怖い。捨てられるのが怖い。」
「本当は赤やピンクなんか好きじゃない。本当は女の子が好む様な色の服も着たくなんかない。男でいたくないなんて嘘だ。このま、、の、男のままの俺、、俺を愛してっつ、、欲しい。」
涙が溢れて言葉が詰まる。
涼を失いたくない。
傍に居て欲しい。
貴方が好きだと。
愛していると。。
「俺、、俺は、涼の事が...」
『愛してるよ。』
「。。え?」
『男のままの椿を、有りの侭の君を愛してる。』
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