10 / 13

第10話 有りの侭の君を。。

「入って。」 あの日と同じ様に彼を部屋へと招き入れた。 『さっき勝さんと話した。彼女も一緒だった。』 勝の口から真実を聞かされた時の彼の気持ちを思うと、胸が苦しくなった。 こんな俺に愛想を尽かすのは当たり前だ。 自分の嘘が招いた事だ。 受け容れるしかない。 「そっか。」 『何で?』 「嘘付いてごめん。騙してごめん。。俺といるの嫌になったよな。」 『そんな事どうでも良いから。』 「え?」 『勝さんから全部聞いた。何で俺に話してくれなかったの?』 「ちょっと待って。何の話を。。」 『椿のご両親の事だよ。』 「あ。。」 『俺ってそんなに頼りにならない?信用出来ない?椿がどう思っていようが、俺にとって貴方は掛け替えのない人なんだよ!』 「信用出来ないなんて思ってない。」 『じゃあ、何?俺の事好きじゃないの?』 「違う。俺は...俺自身が嫌いなだけだ。」 『椿。お願いだから1人で抱え込まないで。俺には全部話して。』 涼が俺を自分の元へ引き寄せ抱き締める。 彼の優しさが俺の胸を熱くさせる。 俺のついた嘘をどうでも良いと言ってくれる彼。 こんな俺を掛け替えのない人と言ってくれる彼。 逃げちゃ駄目だ。 ちゃんと向き合わなきゃ。 彼の為にも俺自身の為にも。。 「。。母さんは父に似た俺の顔が嫌いだった。俺に女の子が好む色合いのものばかりを当てがった。」 「父さんは殆ど家に帰って来なかった。あの日。。母さんが家を出て行った日も、俺は独りきりで花火を見た。。」 涼は黙ったまま、俺の髪を優しくすいた。 「俺が愛した2人は俺の傍に居てくれなかった。俺は誰かを必要とするのが怖い。愛する事が怖い。捨てられるのが怖い。」 「本当は赤やピンクなんか好きじゃない。本当は女の子が好む様な色の服も着たくなんかない。男でいたくないなんて嘘だ。このま、、の、男のままの俺、、俺を愛してっつ、、欲しい。」 涙が溢れて言葉が詰まる。 涼を失いたくない。 傍に居て欲しい。 貴方が好きだと。 愛していると。。 「俺、、俺は、涼の事が...」 『愛してるよ。』 「。。え?」 『男のままの椿を、有りの侭の君を愛してる。』

ともだちにシェアしよう!