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あの夏2

秘密基地に着いた葵は、段ボールの下に隠していたカバーの無い漫画を自慢気に出した。 なんの漫画だろう? 随分ボロボロだけど。 豪は葵の隣に座り、開かれたページを見て「あっ」と声を上げた。 「な? すごいだろ?」 それは所謂(いわゆる)、大人向けのエッチな漫画だった。しかも、かなり生々しい。 そんなもの初めて見る豪は目を白黒させていて、そんな豪を葵は笑った。 「な、なんで、こんなのどこで?」 「柳の家」 柳は葵の同級生の子だ。 聞けば、柳の高校生の兄が持っていた漫画らしく、隠していたのをくすねてきたという。 「柳の兄ちゃんってオタクっていうか、暗いっていうか、なんか、変わってるんだ。こんなん読んでるからだよ」 「こ、こんなの見ちゃダメだよ。怒られるよ!」 「へーき、へーき」 パラパラとページを捲りながら葵が話しているが、豪の頭には入ってこなかった。 漫画とはいえ、卑猥なシーンの連続に心臓がバクバクしていた。それに…… 隣で肩を寄せあって座る葵の事が気になって仕方ない。 葵は「女みたいな名前が嫌いだ」と、豪に師匠と呼ばせているが、目が大きくて可愛らしい顔をしていた。 葵の汗ばんだ小麦色の肌が触れてくることも、なんだかいけないことみたいに感じた。 「お、俺、ちょっとオシッコ!」 なぜだか豪は葵から離れなくちゃと思い、立ち上がって茂みの中へ走った。 「豪!」 残された葵は、豪はエロ漫画を見るのが怖くて逃げたのだと思った。 バレなきゃ怒られることなんてないし、対して面白くもない漫画なのに。師匠と呼ばせてはいるが、実は葵の方が幼かったのかもしれない。 卑猥な絵を見ても「変なの」という感想の方が強かったのだから。 しばらくして、茂みの方からガサガサと音がした。てっきり豪が帰ってきたのだと思い、葵は笑いながら顔を上げた。

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