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ふたり1
「止めろ! 離せッ!!」
豪は葵を抱き上げて、部屋の中の唯一の家具のであるベッドの上に放り投げた。葵は慌てて跳ね起きたが、すぐに豪の逞しい体が覆いかぶさってきた。
「本気にしたのかよ。さっきのはお前をからかっただけだ」
「……葵」
豪の大きな手が葵の服の中に入って、滑らかな素肌を撫でた。葵の体がびくりと跳ねた。
身を屈めた豪が葵の首筋にキスする。豪の脚が葵の膝を割って、大きく脚を開かせる。
「ゃ、やめろ……だめだ、お前はこんなことしちゃだめだ!」
豪の指が葵の乳首を探り当て、引っ掻くように愛撫する。葵の体がぴくぴくと反応する。
豪は本気で葵を抱こうとしている。葵は豪を止めようと必死でもがいたが、逞しい腕に何度も抑え込まれてしまう。
「やめろってば! お前とだけはしたくないっ」
豪は無言のまま、葵の服を脱がせていく。葵は抵抗を続けているが、圧倒的な体格差で難なく裸に剥かれてしまった。葵はうつ伏せになって逃げようと、ベッドの上を這いずったが、足首を掴まれて引きずり戻される。
「……はっ、嫌だ、いやだっ! あ、あ!?」
豪の手が葵の尻の肉を掴んで開く。隠されていた蕾を晒されて、葵は羞恥に赤くなった。豪は躊躇せず、葵のアナルに舌を這わせた。
「ぁあ、嫌……やめろよぉッ! は、あ……嫌だ、あ」
執拗に舐め回されて、下肢が唾液でべたべただ。尻の孔がふやけてしまうのではと思うくらい舐め解されて、葵は抵抗する力を失い、ぐったりとベッドに沈んだ。
大人しくなった葵の中に豪の舌が挿ってきた。葵はたまらず甘い悲鳴を上げる。
舌の次は指だ。うねうねと蠢き、葵が豪を受け入れる準備をしている。
「ひ、ぃい……あ、あぁあ……いやだ、やだ……も、やめてよ」
ぐちゅりと卑猥な音を立てて指が抜かれる。代わりにもっと太くて熱いものが蕩けたアナルに触れた。
「あっ、や……お願い、いや……は、あ! いれないでぇ……ぁあ!」
哀願の言葉は聞き入れられずに、葵は豪に背後から犯された。
その熱、その大きさに葵は口を大きく開いて戦慄かせる。逞しい肉棒はゆっくりと葵の中に挿ってきた。最奥まで突き進み、肉壁をみっちりと塞いだ。
その充足感に葵はぴくぴくと震えながら甘イキしてしまう。
煽るように豪に告げた言葉通り、まるっきり淫売だ。
「……葵、イッちゃった?」
肉体の熱さとは裏腹に、葵は絶望的な気持ちに陥る。
豪に会いたくなんてなかった。今の自分をみせたくなんかなかった。あの日の前までの、昔の葵だけを覚えていればよかったのに……きっと豪は失望する。
「よかった。ちゃんと気持ち良くなってくれて」
「なに、言って……あ!」
安堵したように呟いて、豪は腰を動かし始めた。肉棒を抜け出ていく感覚に葵は喘いだ。再び突き入れられて、熱い息を吐く。
「葵……葵……」
豪の声の切ない響きに、葵の目頭が熱くなる。
本当は豪に会いたかった。
あの事件の後、カウンセラーの指示で豪に会う事は禁止された。豪と会うと事件の日を思い出すからだと。会わなくても、あの日のことを忘れられはしなかったが。逆に豪の事を思うことで葵の心の傷は修復されていった。
自分を助けようと立ち向かってくれた。
ケガは大丈夫だろうか?
豪を置いて逃げたことを謝りたかった。
卑怯な自分を許してくれるだろうか?
どれほど豪に会いたいと願っても、両親は葵を豪に会わせなかった。
周囲からは好奇と憐れみの目で見られ、両親からは腫れ物のように扱われた。
その事が逆に葵を家の中でも外でも孤立させた。
すさんだ生活を送るようになった今でも───豪に会いたかった。
同じくらい会うのが怖かった。こんな自分を見れば、豪はきっとがっかりする。
だが、豪は「葵に会えて嬉しい」と泣いた。
だから、もっと怖くなった。
わざと傷付ける言葉を投げつけて、「そんな葵でも友達だ」と認めてほしかった。
豪に許してほしかった。
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