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ふたりの裏切り者
壁に掛けられた時計の秒針の音だけが静かな部屋にやけに響いた――。
膝を抱えるように項垂れてベッドの上に座る紗葉良に背後から長い腕が伸びる。
背中に口付けられて紗葉良の肩がピクリと反応した。
「――もっと、乱暴かと思った……」
紗葉良がそう告げても龍弥は何も言葉にはしなかった。
ただ延々ときめの細かな白い肌に唇を這わせて味わい、紗葉良が顔を上げると嘘みたいにやさしいキスをした。
引き寄せられて紗葉良は少しだけ苦しそうに眉間に皺を寄せた。すぐ傍にある龍弥の首筋からいい匂いがしてそれがやけに腹立たしかった。
乱暴にその首筋を引き剥がし体重をかけてベッドに背中を沈めた。
無抵抗で龍弥は仰向けになり、その顔には何ひとつ焦りの色もなく、ただ、いつものあの無表情のままだ。
「今度はお前が俺に挿れんの?」
「――だったら? 怖い?」
紗葉良は少し挑発するみたいに長い睫毛を伏せて真下の男を眺める。
「わかんねぇ……」
何食わぬ顔でしれっとそう告げる龍弥の雄はすでに半分は起き上がり、その上に跨る紗葉良の形の良い小さな尻に触れていて、口とは裏腹にもう一度そこを食わせろと堂々とアピールしていた。
――腹が立つ。
結局自分はこの男の奴隷のままだ――。
思い通りにならない自分の感情に、身体に、そこに潜む本能に、紗葉良は酷く苛立ち、自分自身を酷く蔑んだ。
乱暴に龍弥の中心を慣れた手つきですぐに固くさせる。どうすればこの男が気持ち良いのかなんて、飽きるくらいに知り尽くしている。
簡単に自分の思い通りになるそれが今はなんだか可愛くも思える程だ。
自分の後ろをろくにほぐしもせずにそのまま腰を下ろし、自分の中に龍弥の固くなった雄を飲み込ませる。
苦しそうに奥へ龍弥の熱の塊がいやらしい音を立てながら沈んでいく。
2回目なのに初めて貰えたご褒美みたいに、ずっと拭えないでいる背徳感とは裏腹にそれをもっと奥へと身体は欲していた。
「カラダも――ココ、も、女の子より固くて……狭いだろ?」
紗葉良が瞼を閉じて、湿った息を詰めながら告げると、相手の胸に当てた手をいきなり強く掴まれた。
「お前――、斗貴央にもこんな風にしてんのか?」
苦しそうに龍弥がそう告げるので思わず紗葉良は固まり、目を見開く。
掴まれた手を引き寄せられ、繋がった場所が一気に深く龍弥を飲み込み、紗葉良から悲鳴に近い声が短くあがる。
龍弥は上半身を起こし、紗葉良の細い腰を強く掴んでは何度も自身で奥を貫いた。
「痛ッ……、あっ! ああ……っ」
強過ぎるその刺激に紗葉良の瞳に涙が滲む。それに気付いたのか龍弥は紗葉良の頰を優しく撫で、口付けた。
自分の力で身体を起こしておくことができなくなった紗葉良は両手を龍弥の肩に回して、必死にしがみついた。
「龍弥ッ……、ああっ、あっ!」
身体がバラバラになってしまいそうだった――。
龍弥の強過ぎる愛撫に、抱擁に、身体に打ち込まれた熱の塊が怖いくらいに気持ちが良くて、愛しくて、自分が今犯している罪の深さを十分にわかっているはずなのに、何ひとつ抗えない。
――斗貴央……。
遠くなる意識の奥で愛しい恋人がいつものように優しく笑いかけてくれるけど……今はなんだかそれも涙のせいかボヤけて見ることができない……。
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