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みだれる裏切り者
68点。
斗貴央にしては優秀な点数だった。
待ち合わせ場所で返されたテストをニヤニヤしながら斗貴央は眺めていた。不意をつかれて背後からいきなり体当たりされ、斗貴央は思わず短い悲鳴をあげた。
「びっ、びっくりした! 紗葉良??」
体当たりしたまま紗葉良は斗貴央に背中から抱きつき、肩口に頭を乗せてあざとく甘えた視線と声を出す。
「うん……。ねぇ……しよ? 早く……」
簡単な斗貴央はそれだけで催眠でも掛けられたようにヘロヘロになっていた。我ながらチョロいと呆れる程だ。
顔を合わせたらまずは勉強を教えてくれたお礼を言って、テストを見せて、今日あった話をして、と色々考えを巡らせていた斗貴央のことなど御構い無しに紗葉良は珍しくダイレクトな希望を先に口にして来た。不自然と言えば不自然だったけれど、斗貴央にはどんな紗葉良でもご馳走なのだ。細かいことなどは後で良い。今はとにかく目の前のご馳走を一粒残らず平らげたい、それしかなかった。
「んっ……ん。ねぇ、早くっ……斗貴央……、ちょーだい……」
「んぁ……、ま、待って。ゴ、ゴム……」
紗葉良の家に着くなり斗貴央は服を脱がされ恐ろしいほどに甘く激しく奉仕され、頭が溶けるかと思うほどのキスを繰り返され理性を残すのに必死だった。だが恋人はそんな気遣いなどどうでも良いのか、早急に繋がりたいと懇願して来る。
「やだ、早くして……」
「あっ、紗葉……ッ待っ……」
「だめ……んっ……もう入った……」
斗貴央の上に乗っかり、紗葉良は好きなようにそれを奥まで自分の中へ飲み込み、満足そうに深く息をついては自分のペースで動き始める。
「いっぱいしよ? ね?」
妖艶という言葉があるのならこういう時に使うのだろうと、斗貴央は恐ろしいくらいに色っぽく囁いては微笑む恋人に鳥肌が立つほどに興奮していた。
「んっ、斗貴央……ねぇ、もっと、上……擦って……?」
「う、上……? ここ……?」
「あっ! ん、うんっ……、そこっ……あっ……」
紗葉良は斗貴央の頭を抱えるように前からしがみつき、時折強く突き上げる快感に肩を震わせながら嬌声をあげた。
「あっ……そこ、だけ……で、イケそうかも……」
「だ、ダメってば! いっぱいしようって言ったの紗葉良じゃん!」
慌てる斗貴央に「うん」と紗葉良はくすりと笑ってみせた。
後少しのところで紗葉良は斗貴央に止められ、背中をシーツに沈められる。
「も、なんでっ……?」
紗葉良が不満を漏らすのも気に留めず、斗貴央は紗葉良の両膝を持ち上げ濡らされて卑猥な色で艶めく場所を覗き込んでは獣のように笑ってみせた。
「紗葉良のココ、丸見え、スゲェ……」
「バカッ! 何言っ……」
言葉半ばでまたそこを深く貫かれ、紗葉良は声を失った。急なペースで奥まで何度も斗貴央は進み、紗葉良の弱い場所を責め続ける。
「あっ……ああっ! 奥ッ……だめ……っ、あっ」
ガクガクと身体を揺らされ紗葉良は言葉もろくに紡げなくなっていた。前に斗貴央としたのはつい先日の事なのに、ずっと斗貴央に触ってもらえていなかったみたいに身体が、繋がった場所が、斗貴央の熱に飢えていたかのように戦慄いてはそれを強く締め付けた。
斗貴央が小さく呻いて全てを紗葉良の中へと注ぎこむと、紗葉良はなぜか胸がいっぱいになって自然と涙が溢れた。
心配そうに斗貴央が紗葉良の顔を覗き込んでその頰を優しく撫でる。
「……だいすき、斗貴央……」
涙で濡れた綺麗な瞳がそう告げる。
「俺もだよ」と斗貴央は優しく幸せそうに口付けた。
何かに火をつけられたかのように斗貴央はいつも以上に燃えては紗葉良を激しく責め続けた。
今までしたこともないような恥ずかしい格好にされながらも、紗葉良は何度も繰り返し奥まで犯してくる斗貴央の欲望を許した。
四つん這いになって何度も深く、後ろから激しく貫かれ、紗葉良の声はすでに掠れて、それと同時に頭の中も真っ白になって行くのがわかった。
最後の精を身体の奥に受けて紗葉良は酸欠になった魚が鼻上げするみたいにパクパクと口を動かし自分の精を自分の太腿とシーツに吐き出した。
お互いに力尽きたようにベッドに前から倒れこむ。
紗葉良はハアハアと息を弾ませながらぐったりとシーツに顔をうずめた。
「もっ……ぐちゃぐちゃ……」
「……ごめん……」
そう謝りながら紗葉良の背中や肩に口付けている斗貴央自身も明らかに息が弾んでいた。
「……ううん、良い……。気持ち良かったから――」
肩から上にあがった斗貴央の唇を紗葉良は捕まえゆっくりと味わう。
「……俺も……すごい、良かった……けど……」
「……斗貴央?」
斗貴央は紗葉良を後ろから抱きしめながら、顔はずるずると背中に落ちていく。
「……ヤリ、過ぎ……た……」
最後まで言えたかどうだかのところで斗貴央はすでに大きな寝息を立てて眠ってしまっていた。
遊び疲れた子供みたいに無邪気なその寝顔を見て、紗葉良からは思わず笑みが溢れる。汗をかいた髪にそっと口付けると、そこからも大好きないつもの斗貴央の匂いがした。
ゆっくりと身体をずらして自分の腕枕に斗貴央を包み込んで寝かせる。少し抱きしめたくらいでは斗貴央は目を覚まさない。
――斗貴央……。
俺、本当に最低なことしたんだ――。
酷いやつだって自分でも思うし、わかってる……。
けどね……
俺はやっぱり斗貴央を誰にも渡したくない――
本当にごめんね――
それでも俺は
絶対
斗貴央を離さない――――。
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