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第9話
「あーんごめーん、ちょっとほら、先週まで実習行ってたじゃん、レポートのまとめとかしなきゃなんなかったからさぁ」
両手を合わせて頭を下げる。
それはホントだけど、メッセを既読スルーしたのはぶちゃけ故意なんだよなぁ。
「バイトも休んでたし」
いかにも致し方ない事情っぽく並べて、また頭を下げる。
「じゃあ今日行こうよぉ、そろそろバーゲン終わっちゃう」
「えー今日これからまだ講義あるもん、夜約束あるし」
「はぁ? 何、何の?」
「年上の男友達と飲み。友達っていうか先輩?みたいな?」
約束はしてないけど。ちょっと兄さん名前借りるよ。
「実習だからって待っててもらってて、やっと今日なの、だからごめん!」
土下座する勢いで頭を下げたら、ホント渋々だけどようやく納得してくれた。
「ったく、次は絶対付き合ってよ」
「絶対付き合うから!約束する!」
叶うかどうかは別として。心の中で舌を出す。
仲はいいけど、買い物付き合うくらいでもないし。でもなんか向こうがやけに親しげなんだよねぇ。なるべくゼミ以外で遭遇しないようにしてるけど、こうやって探されるしね。ちょっとした悩みのタネだった。
彼氏にでも頼めばいいのに。いるかどうかわかんないけど。まーいいや、めんどくさいし。
気を取り直して寝るに限る。また突っ伏した。
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