9 / 126

第9話

「あーんごめーん、ちょっとほら、先週まで実習行ってたじゃん、レポートのまとめとかしなきゃなんなかったからさぁ」 両手を合わせて頭を下げる。 それはホントだけど、メッセを既読スルーしたのはぶちゃけ故意なんだよなぁ。 「バイトも休んでたし」 いかにも致し方ない事情っぽく並べて、また頭を下げる。 「じゃあ今日行こうよぉ、そろそろバーゲン終わっちゃう」 「えー今日これからまだ講義あるもん、夜約束あるし」 「はぁ? 何、何の?」 「年上の男友達と飲み。友達っていうか先輩?みたいな?」 約束はしてないけど。ちょっと兄さん名前借りるよ。 「実習だからって待っててもらってて、やっと今日なの、だからごめん!」 土下座する勢いで頭を下げたら、ホント渋々だけどようやく納得してくれた。 「ったく、次は絶対付き合ってよ」 「絶対付き合うから!約束する!」 叶うかどうかは別として。心の中で舌を出す。 仲はいいけど、買い物付き合うくらいでもないし。でもなんか向こうがやけに親しげなんだよねぇ。なるべくゼミ以外で遭遇しないようにしてるけど、こうやって探されるしね。ちょっとした悩みのタネだった。 彼氏にでも頼めばいいのに。いるかどうかわかんないけど。まーいいや、めんどくさいし。 気を取り直して寝るに限る。また突っ伏した。

ともだちにシェアしよう!