10 / 126
第10話
昼寝のち講義。無事に終えて今日の俺の仕事は終了。
帰り際、学内のコンビニに足が向いた。フリスク切らしてたの思い出したのね。
ブラックベリー味のちょっと辛いフリスク、かなりお気に入りなんだけど、チェーン店のはずなのに、大学のコンビニで売ってるのしか見たことなくて。そのフリスク買うために常連になっちゃってる。
「お、あったー、しかもラスイチじゃん!」
下から2段目の棚が定位置だった。ついでに缶コーヒーも持ってレジに並ぶ。
地味に混んでた。まぁいっつも空いてる方が珍しいんだけど、それにしたって混んでる。ずらっと5、6人も並んでるのなんて珍しい。
この後昼寝の予定だったから、待ってたって別にいいんだけどさ。
「らっしゃいませ~」
順番が近づくにつれ、声が聞こえてきた。すんごい小さい声で、ポソポソっと話す感じ。ぶっちゃけ、仕事できなそうな感じっていうか。
チラッと前を覗き込むと、細っこい体と黒髪が半分だけ見えた。違和感があった。
(あれ)
常連だから、大体どんなバイトが入ってるか把握してる。バイトはみんなうちの学校の学生で、話したことないだけで顔とネームプレートは嫌でも覚えてる。けど。
(初めて見る奴だな)
記憶の中の顔とネームプレートに一致しないやつが、レジやってた。なるほど、混んでる理由が合点がいった。
待つこと数分、やっと俺の番になる。
「らっしゃいませー」
さっき聞いた、小さくてやる気のなさそうな声。男だ。
ふわっと長い前分けの黒髪と、キレ長い眉毛と目。少し伏し目がちで長い睫毛。綺麗な男って感じだった。
ともだちにシェアしよう!